嵐の前の静けさについて

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嵐の前の静けさについて

 二年特進クラス。  朝のホームルーム前のひととき。  予習復習する生徒。  クラスメイトと話をしている生徒ももちろんたくさんいる。  悠馬は一番後ろの窓際の席。わき目もふらず数学の問題集に挑戦の最中。  教室の中心で話をしている五人の女子生徒がチラチラと悠馬に目を向けている。 「上杉って一日中、机に向かって勉強してるじゃない」 「あれだけやらないと学年三位になれないんかな?」 「二位の荒川が退学したから、次の定期テストは二位かも?」 「もしかして一位かも・・・」  そう言いかけて、ハッとして口を閉じる女生徒たち!  すぐそばで美景沙織が机に向かっている。  沙織がニコッと笑いかけてくる。 「気にしないで。  上杉くん、頑張ってるもん。  私、負けたってしかたないと思ってる」  沙織のすがすがしい態度に女生徒たちは思わずうっとり。 「さすが生徒会長!」  五人は思わず頭を下げる。  沙織のカリスマ性には、誰もかなわない。 「だけどさ!上杉って・・・」 「もしかして、あのこと?」 「うん。ヘンタイだってこと!」 「うちも聞いた。  R18の動画やゲーム、AVや同人誌に囲まれて生きてるって!」 「しかもジャンルはJK物。  ぼっちで、私たちに相手にされないからって、随分惨めな話じゃん」  こっそり耳を傾けている沙織。  誰にも知られないように、こっそりニッコリ笑う。 「でもR18なんて、バレたら即停学。悪くすれば退学じゃん」 「だからヘンタイなんだよ。  自分が抑えられないんだって!」 「確かにあいつ、裏のありそうな顔してる」 「優等生のもうひとつの顏!」 「眼鏡とったところ見たけど、なかなかイケメンなんだけどね」 「中身が腐っているんじゃね」  そこまで言われていいのか?悠馬!  見るがいい。  生徒会長も勝利の笑いを隠すのに懸命。  立ち上がると悠馬の席に近づく。 「上杉くん」  悠馬が顔を上げる。 「美景さん、おはよう」 「上杉くん、よく頑張ってるね」 「そんなことは・・・」  悠馬は恥かしそうに顔を赤くする。 「お互い、定期テストでは正々堂々と対決しようね。  私も負けないから!」  さわやかな生徒会長を演じる沙織。  悠馬は沙織の正体を知らないまま、これからも生きていくというのか?  それはやっぱり危ないと思う。
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