「上杉悠馬はヘンタイ」だって事実について!

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 放課後の生徒会室。  時計は四時三十分を過ぎている。  「生徒会特別会議」の予定時間なんかとっくに過ぎている。  クラスルームほどの大きさの部屋。  長机が横二列、縦五列に並べられている。  机と向かい合って、ひとり用の大きなソファ。  机の一番前列には生徒会執行役員。  後ろの列。  一、二年のクラス委員。  そして・・・  「生徒会活動ボランティア協力員」の生徒たち。  沙織のカリスマ性に引き寄せられ集まってきた生徒たち。  男子もいれば女子もいる。  執行役員以下全員、机を前に直立不動。  会議の開始時刻が四時。  もう三十分以上立っている。  生徒会長室とつながるドアが開く。  沙織が現れる。  後ろから校旗を掲げた男子生徒が続く。 「生徒会長のおでまし」   校旗を掲げた生徒がよく通る声で高らかに宣言。  直立不動の生徒たちが一斉に深々と頭を下げる。  沙織は生徒会室に集まった人たちには目もくれない。  ソファに腰を下ろして膝を組む。  紺のハイソックスに包まれた白く美しい脚が、生徒会室に集まった生徒たちに迫ってくる。  スカートの奥が今にも見えそう。  スカートの裾で絶妙に隠されている。  真っ白な膝小僧が美しく輝く。  ゴクリと唾を呑む音。   かすかに聞こえる感動のつぶやき。  涙を浮かべている男子もいる。   「ご苦労さん。座って!」  全員直立不動のまま。 「座って!」  ひとりとして動く生徒はいない。 「お願い。会議始めるから」    一斉に、 「ありがとうございます」 の声。  着席した生徒を前に沙織が少しだけ笑う。 「校則に違反しアルバイトをしていた荒川由衣は自ら退学した」  沙織はよけいな挨拶は言わない。  人間が一生の間に使える時間というのは限られている。  時間は有効に使わなくちゃ!   モブ相手に余計な言葉を話したくなんかない。 「みんなの働きに感謝する」  沙織がスマホを右手で掲げる。 「全員のスマホに、美景グループの経営する店で使えるクーポンを送信しておいた。  遠慮なく使って!」  生徒たちが一斉に立ち上がる。   「ありがとうございます」  一斉に感謝の言葉が響き渡る。  一斉に頭を下げる。  沙織の父親が流通の大手、美景グループの 社長で、高蔵高校のPTA会長である事実を誰もが思い知る。  日本を代表する経営者とアメリカの雑誌でも紹介されたくらいだ。   「座って!」  沙織がそっけなく指示を出す。  全員が一斉に着席。 「だが校則違反を犯している生徒はまだたくさんいる。  成績優秀な生徒が校則違反をした場合、わが高蔵高校のイメージダウンは図りしれない。  遠山副会長!」  遠山副会長が立ち上がる。  「わが校のアピールポイントは?」  遠山副会長がうなずく。   「高蔵高校は国立大学への進学率が高く、東大進学率は私立高校の中でもトップを誇ります。  数多くの国家公務員を輩出し、『官僚の登竜門』ともいわれています」  遠山副会長の声が生徒会室に響き渡る。 「OK!」  沙織が座るように手で合図する。   「このブランドは守らなければならない。  悪の芽は摘み取る。  次の標的はこの少年だ。  今から時間限定でみんなのスマホにデータを送る。  十分経ったら見えなくなる。  よく覚えておいて!」  全員のスマホに眼鏡をかけた少年の画像が送られた。 <二年特進クラス 上杉悠馬>    
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