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この日は、風見教授に誘われて近所のカフェを訪れていた。
風見教授からの唐突な提案を受けた僕は、思わず目を丸くした。
彼の発言をまともに理解することができなかった。
「どういうことですか?葵はもう…」
「勿論、葵は死んだ。死んだ人間にはもうこの世では会えない。ではどうだろう。この世ではなく、君の心の中に生きている葵になら会えるのではないだろうか。」
風見教授は、ただ真っ直ぐに僕を見つめている。
真剣な眼差し。葵の目にそっくりだ。
だけど、葵はこんな目はしない。
頭の良すぎる人は僕ら凡人には分からない何か特別な感性を持っているとはよく言うが、僕には彼の言っていることが到底理解できなかった。
「ちょっと理解ができません。どういうことですか?」
「いきなりすまない。少し噛み砕いて説明しよう。」
風見教授は、目の前に置いてあるブラックのアイスコーヒーを一口飲むと、先ほどの真っ直ぐで真剣な眼差しから、優しい葵と同じ目に変わった。
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