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僕は目の前にある自分よりもふたまわり程大きな「殻」にじっと目をやった。
無機質なその「殻」は、中に入る主をただじっと待っている様子だった。
僕は少し寒気を感じて、目を逸らし、中年男性の真似をして天井に目をやった。
研究室の天井にある防音のための無数の点が、まるで僕をじっと見つめる目のように見えた。
ここは日本の最高峰、明應大学の脳科学研究室。
キャンパスは、都会から少し離れた神奈川県の市街と山間の中間地点に建っている。
いわゆる大学キャンパスというと、都心のどデカいビルが建つオフィス型のものと、ドラマに出てくる様な広々とした敷地に、芝生の広場やベンチが並んだものとが思い浮かべられるが、このキャンパスは後者の方である。
広い敷地面積に様々な設備が充実した、研究者にとっては打って付けの環境で、日本各地から有数の学者が集まってくる。
特に僕が所属している脳科学研究室がある「人間科学部」は、大学でも際立って人気の学部であり、SF映画に出てくる様な常人には想像もつかない様な研究が日々進められている。
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