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「今日もありがとう。」
グレイ色の無機質なレンガでできた、この辺りでは際立って立派な家が彼女の家だった。
家に着くと、彼女はようやく安心した様子で僕を見て微笑んだ。
「うん、くれぐれもしっかり鍵をかけて、一人で出歩かないようにね。また明日の朝、迎えに行くから」
僕も少し胸を撫で下ろし、それまでの緊張感がスッと抜けていくのを感じながら、それを吐き出す様に声を出した。
彼女は小さな手をゆっくりと振ると、僕と初めて出会った時のような爽やかな笑顔を見せて、家の中に消えていった。
これが、僕が最後に見た彼女の生きた姿である。
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