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と言い残した後、木の葉を踏む軽い音が断続的に聞こえた。それとすすり泣くような声も。
全く、やっぱりだめじゃないか。でもノエルは僕の唯一の希望だ。これから先、辛いことがたくさんあっても、生きていてくれればそれでいい。
彼は紛れもなく僕だ。僕の名前を持っているのだから。
ノエルの気配が完全に消え去った後、近くの方から幾人もの足音を聞き取った僕は、足元に括り付けてある自決用の手榴弾を手探りで外した。鉄の無情な低温を手のひらに感じて、ノエルの冷めた笑顔と抱いたときの温かさを胸に浮かべる。
そして震えた手を制御するのに苦労しながらピンを一気に引き抜いて、額に力の限り押し付けた。
――さらばノエルよ。生きろ。
握った安全レバーをぱっと外して声にならない声で叫んだ。
自由の道を走り続ける少年の泣き声がちょうど掻き消されるように。
……二人の声が重なった。
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