お付き添い人

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「お願いします、お付き添い人さん」 これを最後に 坂口さんの声は聞こえなくなった。 「信子、どう思う?本当に貴美子さんは 召されたんだろうか?」 信子が刈谷の隣に来る。 「はい、彼女のことは何も感じられません 坂口さんの言った通り、連れて行ったのだと 思います、もう安心でしょう」 「そうか、それじゃあ坂口さんの 最後の願いを聞いてやるか」 みゆきが 「関係のない子供さんが可哀想です」 「ひき逃げは、絶対に許せないけど 娘さんは何も関係なかったのに」 ほのかがハンカチで目を拭った。 ミーヤがニャーとなく。 「何だかとても、後味が悪いですね」 「僕たちがもっと早く気付いて あげていれば・・・ 健と正三が悲しそうに呟く。 「今となっては、もうどうしようも ないことだ!俺たちに今できる事を やるしかないんだ、 まずは、遠藤刑事に連絡して 徹底的に天堂廃車工業を調べてもらおう それが今、俺たちにできる 唯一のことだ!」 その晩は、代わる代わる お付き添いをしていった6人だった。 ######################### 青空が広がる雲ひとつない晴天の 朝だった。 刈谷と信子が外に出て両者同時に 大きく伸びをした。 「専務、亡くなられた方達は どこに行くんでしょうね。 私たちでもそれはわからないけど 気になりますよね」 「それは死んでからのお楽しみで いいんじゃないのか、いずれ俺たちだって 死ぬ時が来る、その時にわかるさ。 もしかしたら、亡くなった人達の 世界でも、今度生まれ変わる人達の 為にお付き添い人がいるかもしれない」 「専務、お子様みたいなこと言いますね でも、もしその人達に会ったら 私、生きていた時にお付き添い人 してましたと、言ってあげますよ」 そんな話をしていると、 女子社員が、次々と出社してきた。 皆、元気にあいさつをして行く、 刈谷も信子も負けずに元気よく おはよう!と返した。 お付き添い時間も終わり刈谷が 遠藤に昨夜の件を知らせた。 すぐに天堂廃車工業に行き 捜査してくる、絶対に逃げ徳は許さない と言っていた。 ########################## そして、2週間後廃車工業の社長「天堂昭伸」 が自供したとの知らせが、刈谷の元に 届いた。 今回の事件は悲しい結末だったが お付き添い人達の仕事はこれからも なくならないだろう。 死したものが安らかに永遠の眠りに 付けるように、またこの世に 未練を残さない様に送り続ける その名は 『お付き添い人』 これからも彼らの活躍に期待する。 『お付き添い人』、終わり
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