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テレビをつけ、キャッキャとはしゃぐ香夜。
その横でお茶を飲むお父さん。
台所で夕飯の準備をするお母さん。
当たり前だったその光景は、とても大切な時間だったと気付かされる。
「あら!」
台所からお母さんの声が聞こえ、少し胸騒ぎがする。
「どうした?」「どしたのー?」
お父さんと香夜がお母さんに声を掛ける。
「やだー、私ったら…お醤油を切らしているわ」
ドクンドクンと波打つ心臓。
「俺が買ってこよう」
そう言い立ち上がるお父さんに
「他にも欲しいものがあるから私が行くわ」
とお母さんが言う
「香夜もついてくー!」
香夜はニコニコとしながら自分の上着を手に持つ。
「もうすぐ暗くなるし、外は寒いから車に乗っていくか?」
お父さんの言葉に香夜が反応する。
「車やだー!新しい靴でいっぱい歩くのー!」
そう言うと綺麗な箱に入った靴を取り出し、えへへー!と笑う。
俺は知っている、この会話も、光景も。
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