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テレビの横に飾られたカレンダーに目をやる。
そこには12月と書かれていて、俺は全てを察した。
今日は…あの日だ。俺が全てを失ったあの日だ。
どうにかして阻止すれば、もしかしたら未来に三人がいるかもしれない!
「行っちゃダメだ!!!」
俺は大きな声で叫んだ。
急に叫ぶ俺に三人は目を丸くしている。
「どうしたの凱斗?」
「お兄ちゃん、どうしたのー?」
「驚いた。急に大きな声を出すな」
「醤油なんていらない、他のものもいらない。だから、今日は家に居て」
俺が身体を震わせながらそう言うと、お母さんは困った顔を見せる。
「すぐ帰ってくるから。ね?今日はお父さんも早く帰ってきたことだし、お父さんと待ってて?」
お母さんはそう言うと俺の頭を優しく撫でた。
「お母さん!待って!俺が買ってくるから!だから、だから!!」
俺から離れ、テーブルの前で腕時計をつけるお母さんの背中に向かってそう叫ぶと、お父さんが口を開く。
「凱斗、いい加減にしなさい。急にどうしたんだ」
少し顔を顰めながら俺をジッと見るその眼は暗く鋭かった。
玄関で新しい靴を履き「早くー!」と香夜が呼ぶ。
はいはい、とお母さんが鞄を手に取り玄関へと向かう。
俺は慌てて追いかける。
「お母さんっ…!」
靴を履くお母さんの背中を見ながら声をかけると、お母さんは立ち上がり振り返る。
「すぐに帰ってくるからね。行ってきます」
「行ってきまーす!」
「いやだ、待って…待ってよ!」
俺の声は玄関扉の閉まる音に消された。
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