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「おいおい、大丈夫か兄ちゃん。死体を見て腰でも抜かしたか?」  転倒しそうになった体を立て直した際、背後から流れて来た低い声。顔を引き攣らせ、恐る恐る後ろを振り返った。  俺の目に映るのは、私服に紺色のジャンパーを羽織った細身の中年男性。首もとまで伸びた髪には寝癖らしき跡がついており、強面の顔には、清潔感が有るとはお世辞でも言えない無精髭が生えている。 「……ん?見慣れない顔だな。()(じょ)()の所の新人か?」  男性は物色するかのように俺を見ると、右の口角を上げて薄ら笑いを浮かべる。  魔女子?……ああ、烏眞莉緒の事を言っているのか。この感じ悪いオッサンは誰なんだ?まさか、野次馬が容易に迷い込める筈は無かろう。警官の中を潜り抜けて来たという事は、関係者に間違いないとは思うが。 「はい。本日から法医学センターでお世話になります、来栖倫也と申します」 「そうか、不憫な犠牲者がまた一人。精々、魔女子に頸部(けいぶ)を切断されないように気をつけな。坊ちゃん先生」  (いか)つい顔をした男性は鼻先で笑うと、俺の肩をポンと叩いて部屋の奥へと向かう。  坊ちゃん先生!?俺は平凡な家庭で育った一般人。金持ちでも無ければ坊ちゃんでも無いぞ!  それに頸部を切断されるとは何だ!?助手をクビにされるという事か?それなら、既に首の皮一枚と言う状態だが…… 「ああっ!(かぶら)()さん。またそんな汚い恰好で来て。髭くらい剃って下さいって、いつも言ってるじゃ無いですか!」  遺体のある部屋から女性の声がする。 「うっせーな。こっちは張り込みが続いててそれどころじゃねーんだ。佐倉、おまえは一々煩いな。小姑みたいなこと言うんじゃねーよ」  蕪木?……もしかして、あれが野副さんが言ってた蕪木警部補!?あんな平日の昼間からパチンコ打ってそうなオッサンが、刑事!?
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