嘘つきその②

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嘘つきその②

その男性…カズヒコくんという名でしたが、 カズヒコくんと楽しくお茶をしたエリーは 今度は本当の道を教えました。 「ありがとう、エリカさん。それではまた…」 カズヒコくんがカフェを出るのを見送ってから エリーは携帯を取り出すと、電話をかけました。 「そうなんです、渡したいモノがあって…」 しばらくすると、カフェにやってきたのは あの美しい娘、スミレさんでした。 実はスミレさんはエリーの学校の センパイだったのです。 「エリー、渡したいモノって?」 「実は嘘なんです。スミレさんとお茶したくて 呼び出してしまったの。ごめんなさい」 「ええっ??もう〜〜!これから人が来るから 今日はダメ。またね、エリー」 スミレさんは顔も美しい人ですが、 心も美しい人でした。エリーの嘘に怒ることなく 付き合ってくれる優しい人でもあったのです。 「まあ、そうだったんですね。 ホントにごめんなさい…」 「こっちこそごめんね。今度お茶に付き合うから」 バタバタとカフェを出ていくスミレさんを エリーは笑顔で見送りました。 これで、カズヒコくんは間に合ったはず。 実はカズヒコくんはスミレさんの家に向かう途中で スミレさんの好きなケーキを買うために寄り道を するので、時間を気にしていました。 「ちょっと遅れてしまうなあ…」 「でも、スミレさんはそのケーキが大好きだから きっと喜んでくれますよ」 「では、急いで買って向かいます」 「ごめんなさい、私がお茶に誘ったばかりに」 「いえ。おかげでスミレさんの好きなケーキを 買うことができそうなので。 ありがとう、エリカさん」 カズヒコくんもまたとても良い人なのでした。 エリーはカズヒコくんをステキだと思いましたが スミレさんのことも大好きなので、 2人を応援することにしました。 今日はカズヒコさんはスミレさんのご両親に 初めてご挨拶する日でもあったからです。 カズヒコさんがスミレさんの家に着く頃、 スミレさんも家に戻れるはずです。 「うまくいくといいなあ…」 エリーは独り言を言いながら 残った紅茶を飲み干しました。
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