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嘘つきその⑤
翌日の朝…
エリーは学校へ行く支度をしつつ、朝ご飯の
準備をしていました。
昨日の肉じゃがコロッケはトーストに挟んで
コロッケサンドにすることにしました。
部屋を出るところで携帯が鳴り、エリーは
電話に出ながら外に出ました。
「まあ、おばあさまが…。わかりました。今日の
午後にでも伺います」
隣のあかりちゃんとおかあさんも同じ頃、
部屋から外に出たところで、
エリーが電話しているのを見ました。
2人に気づいたエリーは、電話を終えると
「おはようございます」
と微笑んで挨拶をしました。
「エリー、おはよう」
「おはようございます。昨日はコロッケ
ごちそうさまでした」
あかりちゃんのおかあさんがコロッケのお礼を
言いました。
「いえ…お口に合いましたか?」
「はい、とても美味しかったです」
「タキさんの肉じゃがのおかげですね。
美味しかったと伝えておきます」
「エリー、おばあちゃんがどうかしたの?」
「ええ、少し具合が悪くなって、
昨日の夜に入院したみたいなんです」
「それは心配ですね…」
あかりちゃんのおかあさんも心配そうに言いました。
「午後にお見舞いに行ってきます。ご心配を
ありがとうございます」
「エリー…」
「なんでしょう?」
「エリーはホントはお嬢様なの?」
「え?どうしてですか?」
「今、おばあさまって…」
「あ〜…あははは」
エリーはカラカラと笑うと、
「おばあさまと呼ぶのが私のブームなんです」
「ブーム…?」
思わずあかりちゃんとおかあさんの声が
揃いました。
「はい。そう呼ぶと、なんだかお金持ちの人の
ようじゃありませんか?」
「そっか…じゃあ、あたしもママじゃなくて、
おかあさまって呼ぼうかなあ」
「ステキですよ、あかりちゃん」
3人は笑いながら駅に向かって歩きました。
確かに、お金持ちはこんなボロアパートには
住まないわよね…。
笑いながら、あかりちゃんのおかあさんは
こっそりそう思いました。
午前の授業に出て、午後は早退することにした
エリーは校舎を出て入口に向かって歩いていました。
入口には大きなロールスロイスが止まっています。
「なんか、すごい車が止まってるね…」
「偉い人でも来てるのかしら?」
生徒たちが囁く中、エリーが近づくと、
中から燕尾服を着た白髪の老紳士が降りてきて
エリーに向かってお辞儀をすると、車のドアを
開けるではありませんか…!!
「エリーを迎えに来たの!?」
騒然となる生徒たち。
そんなことは知りもしないエリーは
慣れた動作で後部座席に乗り込みました。
「じいや、ご苦労様」
「エリカお嬢様、お疲れ様でございます」
「午前中しか勉強していないから、疲れては
いないわ。それよりおばあさまの具合は?」
「とりあえずこれから手術を受けられます。
急ぎますので、このままヘリポートまで
お送り致します」
「ありがとう。運転、気をつけてね」
「痛み入ります」
実はエリーは地元ではその名を知らない者は
いないほどの資産家の娘でした。
エリーの住んでいるアパートはおばあさまの
所有物件の一つで、ムリを言って住まわせて
もらっていたのです。
本当は学校のすぐそばにあるタワーマンションも
おばあさまの所有物件で、そこに住みなさいと
言われていたのでした。
「嘘つきエリー」は本当は
どんな少女なのでしょう…?
本当のことは、誰も知りません…。
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