1章-1

4/5
65人が本棚に入れています
本棚に追加
/947ページ
 結花を振り向かせようとあの手この手で、アプローチしての結果だ。  結花としては結婚してやったと思っている。  悠真の実家がローカルスーパーの経営者なのに対し、天下の呉松家とは天と地の格差がある。  そのため結婚する時にかなりもめた。  特に周子が終始悠真の実家を見下す言動をしていた。  結婚を認める条件として挙げたのが  結花を専業主婦にさせること。  全て結花の言うことを聞くこと。  呉松家を贔屓すること。  結花が依田家の実家と同居するのはNG。  依田家との付き合いを結花にさせないこと。  これらを考えたのは結花と周子だ。  一方的に結花に有利な形だった。  しかもこれをきちんとした誓約書のような形で署名させた。  惚れた弱みなのか、悠真は終始結花の言うことを聞いている。 「あの人、今日も仕事忙しいから帰り遅いってさ」  唇をとがらせて呟く結花。  ここ半年ぐらい悠真の帰りが遅い。きつく問いただしても、仕事が立て込んでいると返すだけだった。  悠真が経営しているローカルスーパーは、朝の7時から閉店は夜の10時と遅くまで営業している。悠真の両親と協力して、人がいない店舗にヘルプで行く。それが日常茶飯事だ。 「それ、浮気してんじゃないの?」  縁起でもないことを言う周子。
/947ページ

最初のコメントを投稿しよう!