1章-2

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1章-2

*  最近知らない人に見張られているような気がする。  まるで疑われているかのように。  勤務先のスーパーはもちろん通勤時にも、俺の車の後ろに追いかけられているような気がする。  おそらく1週間前からだと思う。先週はそんなのなかった。 「なんかさー、最近俺誰かにつけられてる気がしてならないんだ……なんなんだよ……」  スーパーの休憩室で部下や同僚に愚痴る。  すると他のスタッフ達が俺も、私もと続ける。  おそらくここのスタッフ全員追いかけられていると思われる。知らない人に。 「社長なにかやらかしたんじゃないんですか……と言いたいですが、そんなタイプじゃないですよね。浮気なんてありえないし、むしろ奥さんにめっちゃ尽くしてますよね」  悠真(ゆうま)はかなりの愛妻家だ。職場でよく自慢している。  料理はおいしい、優しい、仲がいいと本人が言っている。 「こんなのいつまで続くんだろうかー。勘弁して欲しいよー」  悠真は机に突っ伏して呟く。  妻に仕事が忙しいと言っている。それは本当だ。  スーパーは季節ごとのイベントがあるし、その上働く人が慢性的に少ない。学生のアルバイトとパートが多いものの、特に学生は卒論や就活の関係で長期的に働くのが難しい。大学卒業後、正社員として働いてる子もいるが少数派だ。
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