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名前も呉松結花ではなく、120番と呼ばれるようになった。
刑務所同様、名前が剥奪されるのである。
「あんた新入り? 私50番なの。ここは一生出れないよ。おめでとう!」
同室の女性の1人がダミ声で話しかけた。
「わ、私は、呉松結花よ! ゆいちゃんって呼んで!」
「残念ながら、ここは名前で呼ばれない。全員番号で呼ばれる。刑務所と一緒さ。なんたって、ここは、問題起こした人間の最終処分工場だから」
「ど、どういうこと?」
「文字通りさ。私達に行き場がないの。今の時代、一回やらかした人間は社会に戻られるのを嫌がるからねぇ。だからね、人と顔会わせないように、こんな僻地で集団生活おくるのさ。日本各地の”問題児”が送り込まれるんだよ。ここはある意味治外法権だから、館長の言うことが絶対なの。私達に人権なんてないんだから」
自嘲気味に話す女性は、なにか諦め切ったような顔をしていた。
「人権ないって。そんなのおかしいじゃん?」
「おかしいっていっても、あたしたちに言われてもねぇ。夏の暑いし、冬は寒い。仕事が出来なければ罰が待っている。館長や各部屋のリーダーの機嫌を損ねたら死んじゃうからね。服もこんなのだし、虫も出るから」
同室の人達は体をかきむしって必死にこらえる。
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