終末のベルティーユ

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終末のベルティーユ

 そこは色とりどりの花が咲き乱れる、まるで楽園のような世界であった。その世界を与えられ、守護する女神ベルティーユは、神の中ではけして力の強い存在ではなかったものの、心穏やかな人々に恵まれ人々と妖精達が共存しあう絵に描いたような理想郷であったという。  それが全て崩れたのは、ある年のこと。  一人の年老いた占い師が、一輪の花の蕾を見て恐怖し、予言して死んだのである。 『なんということ!これは、破滅の花であるぞ!この花が大量に咲いた時、世界は滅ぶであろう……!』  その黄色くて小さな花は、とても丈夫な性質を持っていたらしい。どこにでも種を広い範囲に飛ばす力を持ち、コンクリートや石畳の隙間にも深く根を張って花を咲かせることができる力を持っている。今まで皆、何度もその花を目にしてきたものの、“スゴイ花だな”と思うか、特に気にも止めてこなかったのが現状だった。  だが、世界的に有名な占い師に、破滅の花と名指しされては話は全く別なのである。  この花は、滅びを齎す花。占い師が言う“大量に”がどれくらいを指すのか皆目見当もつかないが、もしこの花が世界を滅ぼす原因になるというのであれば野放しにしておくわけにはいかない。  世界で爆発的に、そんな“小さな黄色い花”狩りが広がっていった。  植物には全て、一つ一つに妖精が憑いている。花を殺すことは、今まで人類に友好的で支えてくれていた妖精達をも敵に回すことに他ならない。人間達がそれに気づいた時には既に、妖精達の多数を怒らせてしまった後になってからのことだった――。
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