終末のベルティーユ

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 そんなことを繰り返していては、妖精達も人間達を敵視する。彼らは積極的に人間を攻撃することはなかったが、それでも今まで人間に協力していた数々の行為や自供を打ち切ってきたのは事実である。花の蜜などを用いて作られる食品などは全て原材料供給がストップし、花の妖精の加護で守られていたはずの村は森のオオカミやクマに襲われるようになった。それがますます人々の不満や怒りを掻き立て、人間VS妖精の対立構造を作りあげつつあったのである。  本当はクロードのように、今でも妖精を友達だと思っている人間もこの世界にいるはずだというのに。 「ごめんね、メローネ。君達は何も悪くないのにね。何で、君達がこんな目に遭わなければいけないんだろうね。本当にごめん」 『何故あなたが謝るの、クロード。貴方は何も悪いことはしていないのに』 「でも、人間のせいじゃないか。人間が愚かで、たった一つの占いなんかに振り回されて、わが身可愛さに罪もない存在を傷つけるから……」  いつになるか、わからない。それでもクロードはここ数年、ずっと同じ夢を見続けているのだ。いつか大手を振ってメローネと共に歩ける日を。彼女たちが作る金色の花畑を、村人たちと共に作り上げるその日を。  どれくらい時間がかかっても自分はメローネを守り続け、花と妖精を愛する人間であり続けようと思っていた。誰も傷つけず、人間にたくさんの同胞を殺されてなおクロードを信じてくれるメローネのためにも。 「そろそろ、村に帰るね。あんまり長く留守にすると、抜け出したのがバレちゃうから」  満月を見上げ、クロードは立ち上がった。鉢植えを洞窟の奥の奥、岩陰の定位置に隠す。この場所なら、それこそ昼間であっても影になっていて鉢植えに気づかれにくいのである。本当は、もっと日の当たる場所に置いてあげたいのだけれど。  メローネの花は、水も太陽も少なくても長持ちすることで知られている。元々雑草だからタフなのよ、と彼女は笑っていた。そのタフさのせいで怖がられてしまうなんて、皮肉な話ではあるけれど。  今日水をあげたから、最悪あと一週間は水ナシでも大丈夫だろうと踏んでいる。勿論毎日逢いに来るつもりではいるが、突発的なトラブルで過去逢いに来れなかった日があったのも確かなのだ。 「またね、メローネ。また明日。……明日はそうだ、メローネの友達の話をしてほしいな。長い長い、海を越えた向こうまで種を飛ばした友達がいただろう?」 『貴方は本当に、海外のお話が好きね。いいわ、また話してあげる』 「絶対だよ?楽しみしてるからね」  クロードは彼女に手を振って洞窟を離れ。  そしてその日を最後に、二度と彼女に逢うことはなかったのである。  村に戻ったクロードは、己に待つ運命を思い知ることになったのだから。
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