終末のベルティーユ

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 *** ――クロード……クロード。ねえ、どうしたの。何で逢いに来てくれないの。  十日後。カラカラに乾いた土の上で、メローネはぐったりと横たわっていた。今まで何度か、クロードが逢いに来てくれない夜もあったけれど、こんなにも長い事顔を見ていないのは初めてである。何かあったあとしか、思えなかった。喉がかわいて、意識が朦朧とする。それでも思うのは自分の花が枯れそうなことより、まだ幼いクロードのことである。  ただ、もし自分を匿っていることがバレたのだとしたら、自分を探して花狩りの連中がすぐに来るはずだった。それがちっとも現れる気配がないのはどういうことだろう。ならば彼が来られないのは別の理由なのだろうか。  自分を見捨てて逃げてくれたならいい、と願う。  それならとてもさみしいけれど、少なくともクロードは無事である可能性が高いということになるのだから。  だが、そんなメローネの願いは、あっさりと打ち砕かれることになるのである。クロードが現れなくなってから十二日後。突如として、メローネを隠していた岩がどけられ、鉢植えを誰かに持ち上げられ、太陽の下に引っ張りだされることになるのだから。 「ああ!これだよこれ。あのガキのだよな?こんなところに隠してあったのか」  お揃いの茶色の服に帽子。国が組織した花狩りの軍隊の連中だとすぐにわかった。あのガキ。その言葉に、メローネはぎょっとすることになる。 ――ま、まさかクロードに、ほんとに……!?  問い質したいところだが、ヘタに喋ってこちらから情報を与えるわけにもいかない。メローネが喋れることに気づいていないのか、そもそも存在そのものが視界に入っていないのか。三人の男達はべらべらと喋り始める。 「そうそう、アロの村のガキだ……クロードとか言ったっけ?毎晩こっそり抜け出してるのは間違いないのに、花を匿ってるだろって尋問してもちっとも首を縦に振らなかったもんな。さっさと認めて場所を吐けばあんな死に方しなくて良かったってのに」 「鞭打ち、吊るし落とし、焼印に指切りまでやったんだっけ?腸巻き上げられても口を割らないでそのまま死んだんだから、ガキにしてはすげえ根性だったよなぁ」 「おかげで花を隠してる事実確認も取れないわ、結局このちっぽけな鉢植え探すだけで死ぬほど時間取られるわ……ほんと苦労させられたぜ。つか、こっちの洞窟ってゼット部隊が探索済みとか言ってなかったとか?何で見落としてんだよ、馬鹿かよ」 「脳みそまで筋肉でできてんだよアイツ、仕方ねぇよ」 「確かに!」  待って。  ねえ、待って。
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