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俺は深呼吸をして
「大丈夫です。謝らないでください。」
と答えた。黒木課長は、腕を下ろし小さく息を吐いた。
日向さんと俺を見て、
「確かに、一番強く香りを感じたし、他とは違う匂いだった。」
と言った。日向さんが自分のうなじを摩って、その手を嗅ぐ。
「多分、そこじゃないと思う。」
黒木課長が言う。
「うなじに近づく手前で、下の方からムワッっと立ち上る香りだったから。」
あの一瞬で、あれだけ慌てながら、この洞察力。さすがにできる男は違う、と感心してしまう。
「手前?下?」
日向さんが首を捻る。
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