回転オムライス

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回転オムライス

春の日曜日だった 朝からよく晴れた 森へ散歩に出た はるかぜが 耳のすぐそばで バク転した 森は薄暗かった でも木漏れ日が 枯れ葉混じりの 土の地面を 所々、黄色に染めた いろんな鳥が いろんな場所で いろんな鳴き方で 鳴いていた しばらく歩くと 少し開けた場所に出た 木の香りが強くなった 木こりのおじさんが 大きな木を切り倒したのだ もう一人のおじさんが 切り株に座って サンドイッチと赤ワインで ランチをとっている サンドイッチは チーズのと 卵のと 二種類あるみたい もうそんな時間なんだ と思ったら 急におなかがすいてきた ランチ中のおじさんと 目が合った おじさんは ニッコリ笑った 髭にマヨネーズが ついている 「もう少し行くと 向こうに 食べ物屋があるよ」 と教えてくれた つい最近 できたとこらしい こんな森の中に本当に? と思ったが 本当にあった すごく小さな店で ガラス窓の向こうで 皿がクルクル回っている そうか、回転寿司か たまには寿司もいいな そう思って入ったら 回ってたのは 寿司ではなかった オムライスだった 「森に寿司は 似合わねぇだろ、 森と言えば、 オムライス。 そうだろ?」 とその店の オーナーシェフが クールに言った 「さぁ、どこでも 好きなとこに 座んなよ。 今日はあんたが 初めての客さ」 目の前を 色とりどりの ソースがかかった オムライスが 次々と流れていく 初めてみる光景に 圧倒される その回転の中央に 厨房があって オーナーが一人、 一心不乱に オムライスを 作っている フライパンを ガチャガチャ いわせながら 真っ白な 背の高いコック帽が 今にも落ちそうなくらいだ どんどん オムライスができていく そして どんどん ベルトコンベヤーに乗せていく 他に客は誰もいないのに もう50皿以上のオムライスが クルクル回っているのだ 僕は座るに座れず、 呆然と突っ立っていた フライパンの ガチャガチャいう音を 聞きながら
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