第十章『正武家グローバル化計画とエクソシスト 中編 美山高校学校祭』

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 豹馬くんと亜由美ちゃんは車から降りて、そのまま一般客用の生徒玄関へ向かった。  豹馬くんは早々に私たちから離脱することに成功して、ニヤリと笑っていたのが憎らしい。  残された私たちは職員玄関から校内へと入り、事務室と職員室を通り過ぎた先に校長室が見えてくる。  その左手にお馴染みの古鏡が掛けられており、私の眼が久しぶりにチリリと反応した。  付喪神は健在のようだが近付いて覗き込んでも姿は見せず、鏡越しに映った玉彦と稀人三人を振り返る。  この四人がいると出てきたくないらしい。 「竜輝くん、職員室でバケツと綺麗な雑巾借りて来てくれる? 大人三人は校長先生に挨拶でもしてきて」  だっと駆け出した竜輝くんを見送り、玉彦たちは校長室のドアをノックした後、返事を待たずに中へと入り、校長先生の小さな悲鳴が聞こえた。  玉彦がどんな挨拶をするのか気になるところだけれど、今は付喪神が優先だ。  校長室前にあるだけあって、古鏡は私が拭き上げる必要の無いくらい綺麗だった。  相変わらず大切にされているようで安心した。  鏡に両手を当てて額をコツンと付けると私と同じような仕草した鏡の中の女子学生が浮かび上がる。  三つ編みにセーラー服。ずっと気に入っているのか赤い傘を持っている。  でも話すとお爺ちゃんの声なのよねぇ。 「お久しぶり。元気だった?」 『……』 「なによー。会いに来なかったから拗ねてんの?」 『……』 「たこ焼きでもお供えしようか?」 『……』  おかしい。これはおかしい。  古鏡の付喪神がつっけんどんなのは定期だが、ここまで私の言葉を無視することはない。  違和感を覚えた私は額を離して付喪神と見つめ合った。  すると女子学生はしきりに背中を掻く仕草を見せた。 「背中が痒いの? 出て来たら掻いてあげるわよ」  それでも必死に背中を掻いたり指差す付喪神に首を捻っていると、バケツを持った竜輝くんが戻って来た。
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