シャーロック・ホームルームズ

タバコと解決

「タバコの吸い殻事件です。3ヶ月ほど前、体育館裏でタバコの吸い殻が見つかり、学校のみならず地域中にその話は広まりました。中学生がタバコなどとんでもない、と全校集会を開き、タバコ等のルールについてのDVDを急遽流し、各クラスで荷物検査も実施しました」

その他、警察の方の講演会による教育、地域のゴミ拾い活動による好感度の回復なども行われた。

「しかし、これまた犯人は見つかりませんでした」

………………。

「吸い殻ひとつ落ちていただけで、本当に大勢の生徒、地域の皆さん、先生方に迷惑がかかってしまった。そのことを、犯人はしっかりと反省すべきです」

……いや、たしかにタバコを吸ったのは俺だ。しかし、しかし……

「警察による鑑識の結果、犯人は判明しました。しかし、タバコを吸ったことだけに関して言えば、何も問題はありませんでした」

そう、タバコを吸うのは別に……

「なぜなら、犯人は、もうタバコを吸っていい年齢だったからです。

……ということで佐々木先生。最後の挨拶をお願いします」

3年3組副担任である吉田先生はこちらを真顔で見つめながらそう言うと、生徒に頭を下げてこちらに戻ってきた。

「………………」

担任である俺はゆっくり足を進め、生徒たちの前で気をつけをした。

「……この度は、誠に申し訳ございませんでした」

旅立ちの日。

最後のホームルーム。

こうなってしまった以上、今までありがとうございました、と担任に感謝の言葉を届けてくれる人は、もうこの中にはいないだろう。