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卒業とみかん
「えー、これからぁ、最後のホームルームを始めまぁす。礼」
《お願いしまーす》
学級長兼ホームルーム司会の佐藤くんに続いて、みんなで声を揃えた。
「では早速ですがぁ、吉田先生のお話……ってことでいいすかね」
「ん、そうだな」
吉田先生はネクタイを締めなおし、教室の入り口付近から教卓の後ろへと移動した。
「第一中学校3年3組のみんな。まずは、卒業おめでとう」
《ありがとうございまーす》
吉田先生には本当にお世話になった。他と比べてまだまだ未熟だった俺のことを何度も叱りながら、たくさんの大切なことを教えてくれた。
吉田先生はかなりのベテランで、そろそろ退職なんじゃないかという噂があちこち飛び回っている。それでも先生は未だに昼休みは生徒たちと校庭で遊んでいるし、英語の授業のスムーズさは衰えることを知らない。すごい人だ。
「君たちが一年生の頃からずっとこの学年を持ってきましたが、君たちの学年は僕の教師人生の中では一番元気で、小さな問題が絶えない学年でした」
小さな問題。
「例えば、まず頭に浮かぶのはみかん投げつけ事件ですね」
みかん投げつけ事件——
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