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——2年生に進級してすぐだったであろうか。教室棟の壁の至るところに、給食に出たみかんが投げつけられていたのだ。ざっと20個ほど。被害があったのは俺たちの学年の階だけであったため、すぐさま学年集会が開かれた。しかし生徒皆が皆、その悪戯の幼稚さにドン引きしたまま、結局犯人が判明することはなかった。
「壁に投げつけられた大量のみかん。僕も加え、大勢の先生たちが片付けに巻き込まれました」
今だから、心の中で、言える。
「果たして誰がそんなことをしたのでしょうか」
犯人は、俺、佐々木隆一だ。
うちの学年はクラスごとの負担の差を無くすため、欠席者の分の余った給食、特にみかんとかハンバーグとかいう一つ一つ形になっているものは、一度学年室に集められる。その後それらを食べたい人が各々取っていくシステムであり、その日俺は意地でもみかんを手に入れるため、早めに学年室までみかんを貰いに行った。ふと周りを見渡すと先生生徒、ともに誰一人としていなかった。
「そしてなぜ、みかんを壁に投げつけたりしたのでしょうか」
魔がさした。本当に魔がさした結果、俺はそこにあったみかん20個を抱え、廊下に出て、校長に投げつけるつもりで壁におもっきり投げまくった。本当に運良く誰も来なかった。もしあの時あの場に校長が来てしまっていたら、おそらく俺は流れで本当に校長に向かってみかんを投げつけていたことだろう。そう考えると今こうして普通に教室にいれることは、とても幸せなことである。
「えー、卒業ということで、僕はこれから、その犯人の名前を言いたいと思います」
……ん?
「当時僕はみかん投げつけ事件の犯人探しのため、地元の警察に頼んで鑑識をしてもらいました」
け、警察? か、鑑識?
「皆さんの指紋は各々の机から全員分集めました」
みかん投げつけてあっただけだぞ。
「犯人はすぐ分かりましたが、これは卒業の日まで僕だけの秘密にしておこうと思いました」
その瞬間、少し吉田先生が俺の方を向いた気がした。
「と言うのも、実はこの犯人は他の事件にも関わっており……」
吉田先生、いや、
「犯人は、この中にいます!」
吉田探偵による謎解きが、幕を開けたようだ。
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