3つ子が恋したら

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3人が部屋に帰ると秘密の会議が始まった。 「もしかしたらだけど...恭一さんが好きなのは、ソラ、て事になるのかな」 3人は三角になり座り、リクは腕を組んで胡座をかき、会議の始まりだ。 「そ、そんな訳ないよ...」 「好きでもないのにキスするか?普通。しかも、ソラは男だ。恭一さんもゲイには思えない」 神妙な面持ちでカイは親指を噛んでいる。 「...直接、確かめた方が早いのかな」 リクの押し沈めた声に、 「それが早いのかもね」 カイが頷く。 ソラだけはソワソワ、落ち着きがない。 「やめようよ、2人とも...」 「駄目だ。はっきりさせなくちゃ」 カイが言うと、リクがうんうん、と頷いた。 そして、リクは恭一に連絡を入れた。 互いの都合がいい日を合わせ、自宅に来て貰う事になった。 当日。 リクとカイがそれぞれ、忙しなく、リビングをウロウロしている。 ソラは消えてしまいたい...とダイニングテーブルに突っ伏して、息を押し殺して座り込んでいる。 (ピンポーン) リクとカイは争うように玄関に駆け寄った。 「よう」 「こ、こんにちは」 「ケーキ買ってきた」 「あ、ありがとうございます。お茶入れますからどうぞ」 作り笑いを頑張り、リクはキッチンで紅茶をいれ始めた。 「とりあえず、ここじゃなんなんで...」 カイが恭一を部屋へと案内しようとするが、ソラが動かない。 「ほら、ソラも」 唆され、ソラは、うん...、重い腰を上げると、 「大丈夫だから」 キッチンのリクが小声で話しかけ、ソラも微かに笑った。 リクが紅茶とお皿に乗せ変えたケーキを乗せたトレイを運んで、座る。 苺のショートケーキが4つ。 しばらく、4人は無言でケーキを食べ、紅茶を飲んだ。 「さて、これからが本題です」 リクがビシッと恭一を見つめる。 「恭一さんが好きなのはソラですか」 恭一はリクの瞳を見つめ返したまま、かなり長い沈黙を置いた。 ソラは正座の太ももに置いた拳をギュッと握っている。 「お願いがあるんだけど」 突然の恭一の声が静まった空気を変えた。 「3人とも、これ、付けてくれるかな」 恭一が渡したのは3枚のマスクだった。 それぞれの手がマスクを受け取る。 「付けてくれるかな?」 3人はマスクをしようとした、が、ソラだけが、ハッと何かに気づいたのか付けなかった。 「どうした?ソラ」 「う、ううん...」 慌てて、ソラもマスクを付けた。 ほくろもわからなくなり、うーん、と腕を組み、恭一が3人を眺めて唸る。 「マスクしてたら本当、わかんないね」 「一卵性の3つ子ですから」 マスク越しにカイが言う。 「....あの時の子猫、実は死んだんだ」 「嘘!」 神妙な面持ちの恭一の声に即座に反応したのはソラだった。 リクとカイはマスクを外し、ソラを見た。 「....死んじゃったんですか?あの子猫」 ソラは今にも泣きそうだ。 長い沈黙と重い空気。 「ソラもマスク、外しなよ」 恭一に言われ、ソラもマスクを外した。 「嘘だよ、うちで元気にしてる。だいぶ、大きくなったよ」 たちまち、ソラが満面の笑顔になった。 「よかった!」 「どういうこと?ソラ」 ソラはゆっくり2人に説明を始めた。
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