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3人はフランクフルトを3本買って帰った。
ソラだけは、
「...マスタード抜きで」
と言うので、ソラの分のマスタードの小袋は抜いてあげた。
「はああ...」
重いため息をつき、カウンターにへばり込む恭一。
「どうした?」
1人では心苦しく、涼介に打ち明けた。
「へえ!いいじゃん!3人ともべっぴんだし」
「べっぴん、て...そりゃ、可愛いとは思うけどさ」
「何を気にしてんの」
「考えてみたら、ちんこ付いてんだぞ、俺と同じ、あ、お前もか」
じっと涼介が恭一を見据える。
「なんだよ」
「いちいち、そんなこと考えてたのか」
「そんなことって」
「3人とも女の子みたいじゃん?それにほら、穴があるだろ、穴が」
「穴?...本気で言ってる?お前」
「本気も本気。俺なら問題なくあの子らを抱けるね」
また、恭一は深いため息をついた。
「あの子ら、て。3人に告られたんだぞ、同じ顔の3人に」
「だから、どれでもいいじゃん、可愛いんだから」
「どれでもって」
「あ!なんなら3人とも頂いちゃうとか」
恭一が軽蔑の眼差しで涼介を見る。
「サイテーだな、お前」
「そっか?」
「話しにならない。お前に相談したのが馬鹿だったわ」
レジに客が来て、即座に、恭一は、いらっしゃいませ!と満面の笑みに変えた。
リクは1人でコンビニに向かい、買い物かごを手に取った。
プリン...ヨーグルト、そうだ、ポカリも要るな、スポーツドリンクに飲むゼリー...。
買い物かごを恭一が立っているレジに置いた。
「こんにちは。恭一さん」
「こ、こんにちは。今日は1人?」
「はい」
確かほくろの位置で見分けがつくんだったな...と、レジを打ちながら、リクの顔をまじまじと眺めた。
「どうしました?」
「あ、いや、えーっと、リク、くん?違ったらごめん」
「ピンポーン。正解です」
リクがあっけらかんと笑う。
「誰か風邪でも引いたの?」
「はい。ソラが。あいつ、3人の中で一番、体が弱いんです」
「そうなんだ...」
ふと、お見舞い品を届けに行った際のキスシーン、3人にとっては、おまじないの儀式が脳裏を掠めた。
思わず、リクの唇に視線が落ちる。
(...艶っぽい、色気がある唇だな)
この唇に触れたらどんな感じになるんだろう....みだらな想像を慌てて恭一は一瞬で振り払う。
「そ、そういえば、こないだも風邪引いていたみたいだもんな」
振り払うように恭一は言う。
「はい。結局、3人全員、風邪引きましたけど、移しあったら案外、早く治りました」
毅然とした口調で恭一を見上げる。
(移しあってたのか...)
納得がいくような、いかないような複雑な思いだ。
「あ、えっと、お大事にね」
「はい。ソラに伝えておきます」
そうして、買い物袋をぶら下げて店を後にするリクの背中を見送った。
「やっぱり可愛いな、あの子にしたら?」
横から涼介がしゃしゃり出る。
「簡単に言うなよ」
恭一は涼介を振り払い、レジ待ちのお客さんに笑顔を向けた。
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