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ユウとダイチは打ち合わせていないが、それぞれの相手と終止符を打った。
ユウは好きな人がいるから、と中途半端だった、ハヤトとの関係にケリをつけた。
「好きな奴って誰だよ」
「お前には関係ないだろ」
無理やりハヤトにキスされ、突き飛ばした。
「合鍵、返してくんない」
無表情で冷たく言うユウに、ハヤトはキーケースからユウの部屋の鍵を外し、投げた。
「じゃあな」
ハヤトを目で追うこともなく無言で壁に寄りかかったまま立ち尽くした。
ダイチも同じようにヒカルに、別れを告げた。
ダイチはかなり時間を要した。
「嫌だよ、別れたくない」
ヒカルが泣き、しがみついて離れなかった。
「ごめん。お前を本気で好きになれない」
「構わない。俺は好きだから、ダイチのこと」
そうして、つま先立ちし、ダイチを抱き締め、口付けした。
唇が離れると、
「本当にごめん。お前じゃ駄目なんだ」
「...誰か好きな人でもいるの」
ダイチは答えなかった。ダイチなりの最後の優しさだった。
ヒカルは鼻を啜り、涙を手の甲で拭った。
「...わかった。そいつがどんな奴かわかんないけど、負けないから、俺」
そう言うとヒカルはダイチの部屋を後にした。
ダイチは壁にもたれ、しばらくしてタバコを咥えると火をつけた。手のひらの、ユウとお揃いのジッポを眺める。
一緒に楽器屋に行った帰り、2人で並んでしばらくふらついた。
服を見たりアクセサリーを見たり。
「これ、よくない?ダイチ」
一枚のトップスを手に取り、ユウが微笑んだ。
「いいな」
2人で店内を見て回った。
ダイチはガラスケースに入ったジッポを暫く眺めていた。
「なに?気になんの?」
「あれ」
指差すと、
「いいね、俺も欲しいかも」
肩越しにユウが言う。
そして、ダイチの誕生日に、ユウはそのジッポを包装して貰い、ダイチに手渡した。
ダイチは開けると、嬉しさでユウにキスした。
「俺も買っちゃった」
そう笑うとユウの手にも同じジッポがあった。
(懐かしいな....)
思い出しながら、ダイチは微笑み、タバコの煙を吐き出した。
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