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そして、暗闇の中、ステージ上に、Black Angel が姿を見せた。
それぞれが定位置に付き、チューニングが始まる。
ユウは立たずを飲んで見守った。
「あー、あー、Black Angel です」
スポットライトに浮かび上がり、マイクテストを兼ねて、ダイチがMC。
そして、拍手喝采の中、ユウには聞きなれた楽曲の演奏が始まる。
フロアの盛り上がりから、ユウは浮いてしまっていた。
自分のかつていたBlack Angel を眺める、何処と無く寂しい思いがあった。
スムーズに進んでいた。が、突然、マイクの音が消えた。
マイクの故障でアカペラになっていて聞こえなくなったのだ。
「何やってんだよ!」
「聞こえねーぞ!」
フロアからヤジが飛ぶ。
ショウもまさかの自体にマイクを手にして叩き、冷や汗をかいた。
演奏だけで繋いではいるが、このままでは客は帰ってしまう.....
不意にユウとダイチの視線が磁石のように重なった。
フロアの人波を掻き分け、ユウはステージに飛び乗り、ショウからマイクを受け取った。
ざわめきと喝采。
ユウのファン達もいる。
ユウはマイクをスタンドに取り付けると手首を掴み、後ろでクロスした。
思い切り深い深呼吸をした後、ユウはアカペラで歌い始めた。
ユウの迫力のある声がフロアに響き渡る。
マイクの故障も収まったが、ユウはそのまま、汗だくになりながら最後まで歌い上げた。
久しぶりとは思えない程に。
フロアも大盛り上がりだ。
ダイチも汗だくになりギターを弾き、バンドは1つになり、フロアを湧かせた。
「ありがとうございました」
ユウが歌い上げ、息を切らした。
フロアが一瞬、静まり、拍手喝采、口笛にユウやダイチ、Black Angel は包まれた。
今までで最高の出来だった。ライブはユウのお陰で大成功を収めた。
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