Black Angel

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ユウは断ったものの、無理やりのように打ち上げに参加させられた。 ユウにとってはあのままでは客が消えていく、とフォローしただけのつもりだったが、 メンバー達もファン達も、ユウがBlack Angel に戻って来た!と乾杯にも付き合わされた。 「歌上手いんだねえ、ユウさん」 ビール片手に打ち上げに参加していたヒカルが感心な眼差しをユウに向ける。 暫く、皆で居酒屋で飲み食いして盛り上がっていると私服姿の30代位の男が、 「盛り上がってる所、悪いけど、ちょっといいかな」 と、話しかけてきた。 ユウに真っ白な名刺が手渡された。 丸い目で相手の目を見上げ、見つめた。 「演奏聴いたよ、Black Angel の事は以前から気になっていて、個人的に観に来てたんだけどね」 笑顔でユウに話しかける。 ユウの肩越しにダイチが名刺を見る。 見覚えのある事務所の名前と見知らぬ男性の名前が印刷されていた。 「良かったら、うちの事務所に入らないか?」 「それは...」 ユウが口篭る。自分でいいのだろうか...フォローの為に咄嗟にステージに上がってしまっただけだ。 だが、何故か、マイクが回復しても、無意識にマイクを握り続け、歌い上げた。 「君たちのバンド、今はまだまだ克服する点はある。磨けばダイヤモンドになりそうな貴重な石みたいなもんだ、うちで一緒に頑張って欲しい」 まさかの言葉にメンバー全員、言葉を失った。 「連絡待ってるよ」 男が去っていくや否や、メンバーは名刺の奪い合いだった。 そして、喜んだ。 「メジャー、行けんの、俺たち...」 ユウが呆気に取られたまま、呟いた。 ふと、俺たち、と口走ってしまい、狼狽えたが、誰も気にとめる者はいない。 ダイチがビールを片手に持ったままユウの肩を抱いた。 「やったな、ユウ!」 未だ、夢のようで、ユウはぼんやりしている。 「良かったね!ダイチ!」 ヒカルがダイチに満面な笑顔を向け、肩を抱かれていたユウはヒカルの明るい笑顔に躊躇った。 「ヒカル、ちょっといいか」 ダイチはヒカルを連れ、居酒屋を一旦、抜け出した。 「別れるって言ったろ」 居酒屋の入口の隅で、小声でダイチはヒカルを窘めた。 「別れたくないって言ったもん」 「ダイチ」 2人の元にユウがやって来た。 「別れる、て聞かないんだ、ダイチ。ダイチ、そんなにその人の事か好きなの!?」 ダイチにヒカルが必死に詰めよる。 「ああ。好きだよ」 そう言うとユウの顎を持ち、口付けた。 ユウは目が開いたままのキスだったが、すぐに瞼を閉じ、うっとりした表情に変わる。 ヒカルはまさかの2人のキスに言葉を失った。 「ごめん、ヒカル。俺はこいつじゃなきゃ駄目だから」 「ダイチ...」 嬉しさでユウは泣きそうな眼差しでダイチを見つめた。 ヒカルはユウには敵わない、と直感し、無言のまま、1人、居酒屋を後にした。
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