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打ち上げの後、ユウは久しぶりにダイチと住んでいた1kの部屋にいる。
当たり前だが、相変わらず、古くて狭い。
だが、とても懐かしく、今、自分の住んでいる真新しい1DKの部屋より居心地が良かった。
思い切り、懐かしい空気を吸い込んだ。
灰皿を挟んで座り、互いのジッポで火を付け合い、タバコを吸った。
「ビールあるけど、飲むか?」
「うん」
ダイチが片手に2本のビールを持ち、1本をユウに差し出した。
同時に2人はビールを開け、喉を鳴らした。
暫くして、ユウから、
「売り専、もう辞めない?」
切り出した。
「そうだな」
2人はスマホを取り出し、順番に店に電話し、辞めることを報告した。
デビューするかもしれない、とは言わなかった。
2人で一枚の名刺を見つめた。
「不思議だね。久しぶりに歌ったらさ、すげー、気持ちよかった」
ダイチの持つ名刺に視線を落としたまま、ユウが無邪気に笑う。
「いつかデカい箱でやりてえな、ライブ」
「うん」
どちらからともなく抱き合い、キスを交わす。
シングルサイズのベッドで抱かれ、ユウはダイチにくっついた。
「落ちつく...」
呟くユウに、
「俺も」
ユウの黒く艶やかな髪にダイチはキスした。
自分と同じシャンプーの香りがした。
ユウもダイチの頬に口付けた。
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