Black Angel

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そうして、事務所に所属する事となった、Black Angel。 事務所のスタジオでユウは初めて、ボイスレッスンを受け、元々、才能のあったユウの歌声は一層、輝きを増していった。 何日もの時間を費やし、ダメ出しを喰らいながら、デビュー曲の録音も開始している。 ユウとダイチはまだバンドだけでは生活が難しく、売り専から離れ、一緒に同じ居酒屋でバイトを始めた。 「なあ」 「うん?」 「もうさ、話しちゃわない?メンバーに」 変わらずシングルサイズのベッドに座り、向き合いながら、ダイチに切り出され、ユウも頷いた。 ユウとダイチが実は交際している事を知らされたメンバー達はさすがに最初は驚いたが、 「なんだよ、早く言えよ」 「別にお前らが付き合ってるから、て、そもそも、Black Angelを離れる訳ないじゃん。めっちゃ好きだもん、俺、Black Angel」 メンバー達の優しさにユウとダイチは顔を見合わせ、微笑んだ。 数ヶ月という時間をかけ、時にはスタジオに泊まり込むこともあったが、ようやく、大願だったデビュー曲は完成した。 アニメの主題歌として起用される事ともなった。 MVも無事、完成し、早速、ネット配信されるや否や、既にいたものの、Black Angel のファンは桁違いで増えていき、再生数もうなぎ登り、注目の新人バンドとなった。 ローカルの音楽番組に出演する事もあり、ユウは次第に不安が募っていた。 成功は確かに嬉しい。 だが、成功をすればする程、自分たちの存在を世間は知る。 ユウは微かに不安と恐怖を感じていた。 自分だけではなく、特にダイチは長い期間、売り専にいた事を思うと当然といえば当時だ。 「どうした?ユウ。元気がないな」 互いに向かい合い、食事の最中、ユウの表情から不安を察し、ダイチは声を掛けた。 「もしさ、もし、もっと有名になったら...」 「うん?」 「俺たちが売り専いたこと、バレちゃわないかな、ゲイだってこと、バレちゃわないかな」 表情を無くし、呟くユウにダイチは笑顔を向けた。 「バレたからって。芸能人、有名人、あるあるじゃん。というか、証拠もなんもない、ゲイビがある訳でもないんだし」 ダイチはユウの作ってくれたハッシュドビーフをスプーンで掬い、頬張った。 「大丈夫だよ、そんな、心配すんなって」 「うん...」 これならいっそ、マスターにデビューするかもしれない、と伝え、辞めた方が良かったのか、ユウにはわからなかった。
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