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……然はとっさにその違和感に蓋をする。
紫ほど容貌が優れた女が自分のものになることは自慢だ。それを思えば、嗜好の変化など、小さなこと。
良い方に解釈しようとすればするほど、本来見るべき視点が狂い始めている事に然は気づかず、自分の判断は正しい、と思い込んでいた。
もう亜未はこの世にはいない。
確かに、この手で、殺したのだから。
「……紫、嬉しいよ」
然は紫に向かって笑顔を向けた。
彼女に手を握られる。込められた力は強く、じぃんとした痺れが伴う。それなのに、手は真冬の北風のような冷たさだった。
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