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久遠、と表示されたレターボックスから出てきた封筒。そこには宛先名も差出人の名前もなく、誰かが直接投函したものようだった。不審に思った然は、部屋に入り、すぐに封を開けた。
出てきたのは数枚の写真で、見た瞬間に心臓が冷えた。
そこには亜未の死体がオレンジのキャリーケースと一緒に映っていた。
「な、……この写真……」
仕事終わりの体に鞭を打ち、急いでマンションを出た。すぐに電車の時間を調べ、駅に向かう。
誰が、どうやって、一体、何のために?
封筒の中には写真しか入っておらず、メッセージも何もなかった。
自分の行動は完璧だったはずだ。それに、亜未だけ映っているのは不自然すぎる。
一緒に埋めているものはどこに行ってしまったのか。まさか、発見されてしまったのか?
迅る気持ちを必死に宥め、駅で降りると辺りは暗闇に包まれていた。前回も借りたレンタカー屋に足を踏み入れると、店主らしき老人が然を見た。
「……おや」
と、首を傾げる。
「こんな時間にレンタルかい? もう、閉店だ」
「すみません、一時間だけ貸して頂けないでしょうか? 倍額払いますので」
頭を下げると、初老の男性は必要書類と車の鍵を取り出した。然が手続きを済ませると、奥から中年の男性が姿を見せた。
「……あれ? また来てくれたんですね」
返事をせず、頭を下げ、足早に車に向かう。
「婚約者さんに店のことを言って頂き、ありがとうございます」
足は止め、ゆっくりと振り返る。
「……今、何と?」
「……あ、この前、来てくれたんです。感じが良かったって言ってくれたんですよね? 親父と一緒に嬉しくなっちゃって。お気を付けて、行ってらっしゃいませ」
「……その婚約者、名前はなんと言ってましたか?」
「更科紫、さんだったかな……」
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