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えんじ色のメガネ拭きがなくなっていることに気がついたのは、洗濯物を畳んでいるときだ。亜未は洗濯後のジーンズを衣装ケースに戻しながら、その存在を思い出した。レンタカー屋の領収書を財布から取り出し、連絡する。
店主は、忘れ物はありませんでしたよ、と言った。
久遠のレターボックスに写真を入れたのは三日前。
仕事から帰ってきた然の行動を隠れて見ていた。エントランスではすぐ開封せずに、やきもきしたが、部屋に戻った彼が顔色を変え、再びエントランスホール降りてきたのを見たとき、自然と笑みがこぼれた。
焦りようを見て、胸がすく思いがしたが、それは束の間しか続かなかった。
もし、メガネ拭きを山に落としていたとしたら、然に見つかってしまった可能性も考えられる。最悪、写真を撮ったのは更科紫であることを疑われかねない。
胃の奥が疼き、熱を持つ。何度も刺された腹部への衝撃は体が変わっても、クリアに感覚が残っている。
二度も、受け身にはならない。
亜未は現像した写真を持って、近くの交番に向かった。
隣人から付き纏われていること。
そして、奥さんが二週間ほど前から姿が見えないことを伝える。
警官はメモを取りながら穏やかに話を聞いていたが、ポストにこれが投函されたので、怖くって、と亜未の死体が映った写真を見せると態度を一変させた。
山の名前も、レンタカーのことも、言わなかった。あくまで、更科紫であるための内容を口にした。
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