プロローグ

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プロローグ

 特別偏差値が高くも低くもない、どこにでもあるような公立高校。そんな北乃(きたの)高校で、なんとも奇妙な噂が流れていた。 「ねぇ、って知ってる?」 「うん! 知ってるよ。今、噂になってるよね」  1人の女子生徒の質問に、別の女子生徒が元気よく答える。 「最近、学校の色んな所で聞くんだけど、あれって何なの?」  そう()くと、待ってましたと言わんばかりに、机から身を乗り出して答える。 「不可思議な事件や出来事を、解決してくれるっていう、LIME(ライム)のアカウントだよ! ID検索で『2222』って入れると、出てくるんだって」  LIMEというのは、人気のメッセージアプリのことだ。流行りというより、使っているのが当たり前となってきている。 「不可思議な事件ね……。それって本当なの?」 「嘘っぽいけど、本当らしいよ。実際に相談したって人もいるし!」  でも……とテンションが高かった女子が続ける。 「葉桜の中の人と会ったって人はいないんだよね。いや、いるのかもしれないけど、正体は分からないんだよ」 「へぇ、不思議な存在なのね。それにしても、何でって名前なの?」  葉桜、花が散って葉が出始めた桜のことだ。「んー」と唸って、女子生徒が言う。 「それも不思議だよね。実は、理由も由来も分かってないんだよ」 「何だか、逆に不気味ね」  ふと笑って女子生徒が言うと、授業の始まりを告げるチャイムが鳴り響いた。
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