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リュックの中でLIMEを開くと、案の定、橙真から画像というかスクリーンショットが送られてきていた。葉桜のトーク画面だ。
依頼内容はこう。2日前から頭痛や吐き気、倦怠感が続いていて悪夢も見る。病院に行ったけど、原因は分からない。できるなら、原因を見つけて解決してほしい。
「んー、まぁ確かに僕の事件かな」
ただ、これだけじゃ何とも言えない。小さな声で唸っていると、もう1枚画像が送られてきた。
「あぁ、なるほどね」
「何か心当たりはないか」という橙真の問いに、『症状が出た日の前日に、こっくりさんをした』と答えていた。原因もその中に隠れていそうだね。
依頼内容の確認が終わったところで、担任の先生が教室に入ってきた。スマホをリュックの奥に突っ込み、黒板の方を向く。
「今日はHRの前に、アンケートを取る」
そう言い、先生はプリントを配り始めた。何のアンケートだろうと疑問を持ちつつ、プリントが回ってくるのを待つ。僕の席は1番後ろだから、プリントが来るのが遅いんだ。窓側の1番良い席だけど。
前の席の人からプリントを受け取り、シャーペンを取り出す。カチカチと芯を出しながら、プリントを見ると『いじめについてのアンケート』と書いてあった。
「変だ……」
「にゃあ」
誰にも聞こえないように呟くと、肩にいたコトが返事をした。
この手のアンケートは定期的に行われるけど、大体4ヵ月に1回くらいのペース。先月も似たようなアンケートを取ったと思うんだけど……気のせいかな。
まぁいいや、とサラサラとアンケートに答えていく。先生の指示でアンケートを回収した頃には、ほとんどHRの時間は無くなっていた。
「1時間目は現代文。あ、そうだ」
リュックからスマホを取り出して、橙真にLIMEを送る。
『依頼人に2つ質問しておいてくれないかな。1つは、こっくりさんのルールはきちんと守ったのか。もう1つは、こっくりさんをきちんと終わらせたのか』
送信ボタンを押すと、すぐに既読が付いた。さては、スマホを触っていたな。
『了解!』
橙真からの返事を見て、LIMEを閉じる。依頼人から返事が来たら、またスクショを送ってくれるかな。
「にしても、こっくりさんか」
「んなぁ」
肩に乗っていたコトが、窓の縁に飛び移る。こっくりさん、結構有名な遊びだけど、危険な遊びなんだよね。
詳しくは知らないけど、憑依霊を呼び出す占いの1種とされているんだっけ。それも呼び出すのは、狐とかの動物霊なんだとか。してはいけない質問があったり、しっかりとルールがあるらしい。
「さっきの質問で、少しでも原因を絞り込めるといいんだけど」
ため息交じりに呟いた声は、先生の声にかき消された。
3時間目の美術が終わった頃、LIMEに橙真からスクショが送られてきているのに気がついた。橙真……授業中に送ってきたんだね。
「んー、困ったな」
依頼人からの返事は、『ルールはきちんと守ったし、最後の「お離れください」も言った』というものだった。
今、ありえる可能性は4つかな。1つ目、元々霊感が強くて、こっくりさんをしたことで体調を崩した。……可能性としては、これが1番低い。
2つ目、何か恨みを買って生き霊に取り憑かれた。3つ目、橙真みたいに霊に取り憑かれやすい体質で、何かに取り憑かれた。この2つは、こっくりさんとは関係ないね。
最後に4つ目、こっくりさんのルールを知らないうちに破ってしまった。まぁ、これも微妙だけど可能性としてはある。
「つまり、何も絞り込めなかったってことか……」
ため息を吐いて、椅子にもたれかかる。取り憑かれている可能性が1番高いけど、何に取り憑かれているのか、数、強さ……何も分かってないんだよね。事前情報が少ないのは辛いな。
「にゃー」
コトがぷにぷにと僕の頬をつつく。弱気になっている場合じゃないよね。どんな場合でも祓えるようにしておかないと。
「にゃあ」
「ん、大丈夫。方法はあるし、どうにかできる」
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