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盗み聞きしていたのがバレないよう、物音を立てないように本を戻して、素早くその場を離れた。新しい本のコーナーを見ながら、情報を繋いでいく。朝のアンケート、こっくりさん、相談、罰……多分、僕の予想は当たっているだろう。
「……き?」
そもそも、こっくりさんがこんなことをするのか、分からない。でも、個体差もあるし……この可能性が1番高い気がするんだけど。
「おーい、紅樹さん?」
ぽんぽんと肩を叩かれて、現実に戻ってきた。そっとため息を吐くと、橙真が顔を覗き込んでくる。
「もしや、何か分かったのか?」
「……うん。どこまで当たってるかは、分からないけどね」
そう答えると、ニイッと笑う橙真。橙色の目が教えてくれと言っている。目は口ほどに物を言うとは、よく言ったものだね。予想でいいなら教えようと口を開いた時、昼休みの終わりを告げるチャイムが鳴った。
「えっと、公園に行く途中でよかったら話すよ」
「ちぇー、タイミング悪すぎだろ。分かった、楽しみにしてるな」
楽しみにはしないでほしいかな。ま、少しでも予想ができて良かった。盗み聞きしたのがバレてないといいけど。
5時間目の英語、6時間目の数学、7時間目のLHRを乗り越え、いよいよ放課後になった。約束の17時までは30分ある。学校から公園までは歩いて10分だから、準備もできるね。下駄箱で橙真と合流して、公園に向かう。
「それで、紅樹の予想って?」
校門を出た時、橙真が訊いてきた。覚えてたか。
「その前に、1つ質問してもいい?」
首を傾げながら、「あぁ」と答えた。
「2組か3組の西さんって人、ここ数日、1週間くらいかな。休んでたりしない?」
「西……あ、そういや3組に、1週間くらい来てない人がいるって話は聞いた。名前は分かんねぇけど」
なら、その人が西さんだ。これで、僕の予想が真実に近いことが分かった。分かってしまった。
「その、西さんって人が関わってんのか?」
「うん。西さん、いじめられているんだよ。松崎さんに」
朝の不自然なアンケート、あれは西さんの件で何か知っている人から情報を得るためのもの。多分、効果はないと思う。後は、図書室での会話だけど……。
「女子2人と西さん、松崎さんには何か繋がりがあるんだと思う。同じ部活、とかね」
3日前の放課後、女子2人と松崎さんでこっくりさんをした。その後、何かの事情、単純に時間とかかな。先に松崎さんが帰った。女子2人は残された紙と10円玉で、再びこっくりさんを始めた。それで、こっくりさんにこう訊いたんだと思う。
「こっくりさん、こっくりさん、私たちが犯人だとバレないように、松崎を苦しめる方法はないですか? ってね」
橙真は黙ったまま、僕の話の続きを聞く。
「それで、こっくりさんは『ぼくにまかせて』と返事をした」
こう考えれば、辻褄は合うはずだ。どこまで正しいかは、分からないけど。
「じゃあ、松崎に取り憑いてるのは……こっくりさんってことか?」
「多分ね。最初は西さんの生き霊とも悩んだけど、こっちの可能性が高いと思う」
そう言った時、丁度公園に着いた。僕の予想も伝え終わったし。
「松崎さんが来る前に、準備をしてしまおう」
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