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拓磨が家庭教師の日だった。
「穂高いるー!?」
変わらず、威勢よい史哉がやってきた。
「史哉...」
「これ!」
穂高に手にしていたビニール袋を押しつけた。
「実家に大量に送られてきて困ってるんだよね!そこの子供にでも食べて貰わないと邪魔で仕方ない」
ビニールを広げ、中身を見るとラ・フランスが数個入っていた。
思わず、穂高はにやけ、見ていた拓磨は仄かに史哉が赤くなっているのを見逃さなかった。
送られてきた、とは嘘で、自分が結月が食欲がないことを史哉に話したからだろう、と拓磨は思った。
いつものバーで、史哉はその時、ふーん、で終わったのだけど。
「ありがとう、頂くよ。せっかくだし、結月、食べよう」
結月も連れ、穂高はキッチンへと向かい、史哉と拓磨も後を追った。
チラリ、拓磨が史哉を見て笑う、
「な、なんだよ」
照れくさいだけなのだが、つい荒くなってしまう性分だ。
家政婦が剥くと言うのを断り、穂高はキッチンに立ち、ラ・フランスを剥いていると、史哉が近づいた。
「...あの子さ、もっと子供らしくなればいいのにね」
「...どういう意味?」
「あの子、勝手に僕たちに迷惑をかけてる、て、悩んでるみたい。それだけじゃもちろんないだろうけどさ。迷惑かけるのが子供じゃない?」
「...確かにそうだな」
2人が肩を寄せ合うように並ぶ姿は様になり、結月は自然とキッチンに立つ2人を無言で見つめた。
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