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次の日には穂高は手土産を手に、結月の家を訪れた。
穂高から手土産を受け取り、母親は、ご丁寧にありがとうございます、と、穂高に頭を下げた。
「どうですか?結月くんの様子は」
「それが。病院も行きたがらないし、食事すら取らずに部屋に引きこもってしまって...」
それを聞いた穂高は母親から預かった雑炊の器をトレイに乗せ、結月の部屋をノックする。
ドアを開けると、部屋の隅で丸くなっている結月がいた。
「お母さんに聞いたよ、食事も摂っていないんだって?食べないと体に良くないよ」
「...食べたくない」
「少しでいい、食べてごらん」
結月に寄り添い、雑炊をレンゲで掬うと、結月に近づけた。
「...お腹の子の為にも栄養を摂れ、て意味ですか」
穂高は一旦、レンゲを置いた。
「そういう訳じゃない。まだ妊娠しているかもわからないだろう?まだ13歳なんだ。
育ち盛りだから結月が大きくなるように、しっかり食べて欲しいだけだよ」
言い聞かせるようにゆっくり、優しく穂高は結月に語りかけた。
「ほら、本当はお腹すいてるんだろう?」
穂高は改めて、レンゲを結月の口元に当てると、結月の口が小さく開き、雑炊を食べ始める。
「どう?美味しいかい?」
結月が無言で頷いた。
一口食べたら、大丈夫だろう、と穂高が思っていた通り。
穂高に食べさせて貰いながらあっという間に雑炊の入った器は空になった。
「まだ食べる?お腹いっぱいになった?」
「...もう少し食べたい」
朝から何も食べていなかった結月の為に、穂高は、
「ちょっと待ってて、結月」
結月の頭を優しく撫でると、一旦、穂高は結月の部屋を後にした。
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