嘘つきの本音

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「……後悔してる?」 チャンネルを無意味に回し続ける渡君が、視線をテレビに固定しながら唐突にそんな事を言う。 「まさか!彼らが死んだ時ざまあみろと思ったってあの時言ったでしょう?」 ずっと仕方が無いのだと思っていた。私が化け物を認識するから悪いのだと。全部私のせいだと。 だけど、それは違うと渡君が教えてくれた。私の身体を縛っていたものを取り払ってくれた。 リモコンを奪って、適当ににチャンネルを変える。画面にはクラスメイトの母親が涙ながらにインタビューを受ける所が映っていた。 「……死ぬつもりだった私が、わざわざ生きてまで渡君の手を取る事を選んだんです。後悔なんてするわけない」 テレビの電源を落として、渡君に向き直る。 「それに私、今が生きてきた中で一番幸せなんですよ」 例えそこが常識や倫理観からかけ離れた場所でも。指を刺されて生きていく事になっても構わない。 私と言う存在を認めてくれる人達に出会えた。これ以上幸せな事はないのだから。 「だから、ありがとうございます渡君」
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