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また一人、クラスメイトが殺された。
逃げようともがきながら化け物に食い殺されたクラスメイトだったものが視界の端に映る。
廃病院はまさに、地獄の様な有様だった。
恐怖のあまり泣き叫ぶ生徒。
わけも分からず激昂する生徒。
腕を食われて絶叫する生徒。
白いはずの壁や床は真っ赤に染まり、むせ返りそうな程の血の臭いを漂わせている。
昨日までの私なら気が狂っていたであろう光景。
それをどれだけの時間眺めていただろう。
鼓膜を突き破りそうなくらい騒がしかったのが嘘のように。化け物が徘徊する音しか聞こえなくなった。
皆、死んでしまった。
あんなに正義はこちらにあるのだと。自分達こそが正しいのだと。そう言わんばかりに正義を振りかざしてきたクラスメイト達が。あんなにも馬鹿にして、否定していた化け物に為す術なく殺されて、無惨に床に転がっている。
呆気ない死に様だった。
「ねぇ、今どんな気持ち?」
どこからともなく現れた先輩の方に、視線を向ける。心配そうに。何か期待しているように。私を見つめる先輩の問いに答えようと鈍い頭を働かせる。
「……すっきりしました」
床に広がる赤に視線を落として答えを口にすれば、先輩は満足気に笑った。
「……よく笑えますね」
「その言葉、そっくりそのまま君に返すよ」
そう言われて、初めて自分の口角が上がっている事に気付く。
まさか自分が人の死を笑うとは思いもしなかったけれど、不思議と不快には感じない。自分はこんな人間だったんだなと。今まで知る事のなかった自分を見つけ出せて、むしろ喜びすら感じていた。
「最低だと思いますか?」
「いや?全く思わないよ。……逆に聞くけど。自分を理不尽に虐げてきた相手が死んで、悲しいって思う人間って怖くない?」
「…………以前の私なら悲しんでましたよ。自分がこんなだから巻き込んでしまったって」
多分。というより確実に。私はクラスメイトの死を嘆いて、激しい自己嫌悪に陥っていただろう。全部私のせいだと。私がいたからこうなったんだと。
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