嘘つきの本音

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『○○高等学校で起きた猟奇殺人事件から二週間。未だに犯人は捕まっていません。警察が捜査を進めていますが​​────』 ニュースから流れるのはあの日の事ばかり。 「前代未聞の大事件とは言え、毎日毎日同じニュースばっかり。よくやるよね」 気だるげにテレビを眺めていた世渡徹先輩、もとい(わたる)君は、適当にチャンネルを回し出す。 「仕方ないですよ。安全なはずの学校で生徒がいっぱい死んだんですから」 あの日、廃病院から帰ってきた私と渡君。そしてその方が面白いから、なんて理由で持って帰ってきた惨い死体達。それを教室に放置して、私達は数珠の効果で誰にも気付かれる事なく空き教室に移動した。 当たり前だが学校は騒然となった。 まさか授業中に人が大勢死ぬなんて誰が考えるだろう。私だって、異能と言う存在を知らなければわけも分からず混乱していたに違いない。 「事情聴取は落ち着いた?」 「はい。おかげで休校を満喫できます」 私はクラスで唯一の生き残り。しかも事件が起こる少し前に腕から血を流しながら教室を飛び出した所を多くの生徒に見られている。事件に何かしら関係があると警察に思われても仕方が無い。 そうなる事を見越していた渡君達が色々と手を打ってくれていなかったら、どうなっていた事やら。下手したら殺人を疑われたり、なんて事もあったかもしれない。 「異能って本当に便利ですね。まさか私と渡君がずっと保健室にいた事になってるなんて。最初聞いた時は驚きました」 そうなのだ。廃病院にいたはずの私と渡君は、何故かずっと保健室にいたと言う事になっている。私の怪我について保険医含めて三人の教師と話していたらしい。おかげで証言が取れて私の身の潔白は証明されたのだ。 「ミラの変身する力と演技力はほんと、恐ろしいよ。敵に回したくないね」 「渡君の任意の場所に移動する力もしょう君が作った数珠も私からしたら恐ろしいですよ?」 彼らが本気を出せば、国を滅ぼす事だってできるんじゃないだろうか。 「そもそも異能自体が使い方間違えれば危険なものが多いからね」 「地獄絵図作った張本人が何言ってるんですか」 「彼らは正義の味方面して好き勝手やった報いを受けた。ただそれだけだよ」 これ以上ないくらい爽やかな笑顔に肩を竦める。
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