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商店街で出逢って、恋に落ちたのはすぐのことだった——こんなに急速に惹かれ合うなんて、僕と龍さんってロミオとジュリエットみたいだ。
「ロミオとジュリエットって、ハッピーエンドじゃないよね。いや、見ようによってはハッピーエンドなのかな。とりあえず、一気に燃え上がったら、後は燃え尽きるのを待つだけってことだよね」
一緒にランチをしてる真彩さんが、不吉なことを呟いてから、美味しそうにツナとトマトとチーズのサンドイッチを頬張った。
季節は春——アメリカの大学に留学してから、あっという間に半年が過ぎた。それでも、卒業までは一年半もあるのに、燃え尽きるとか言わないでほしい……。僕は好きだもん、ロミオとジュリエット。
食べかけのサンドイッチをお皿に置いた僕を見て、真彩さんがクスクスと笑っている。
「もう、冗談だよ、冗談っ。私の前で惚気たりするから、意地悪したくなっただけ。ほらー、食べよ?食べないと午後の講義が頭に入らないよ?」
「食べても食べなくても、講義の内容は頭に入らないよ」
「なんで?」
真彩さんはきょとんとした顔で、紙のカップにささったストローを咥えている。なんで?じゃないよ。
「だって、龍さんに逢いたくなっちゃったもん。うぅっ、今すぐ日本に帰りたい……」
「クリスマスもお正月も日本に帰ったじゃない」
「何ヶ月前だと思ってるの?2ヶ月前だよ?」
「ついこの間じゃない。困らせてばかりいると、龍さんに愛想尽かされちゃうよ?司くんって、凄く大人っぽくて、何があっても動揺したりしないんだと思ってたけど、実はおこちゃまだよね」
真彩さんの言う通りだ。僕は別に、龍さんを困らせたいわけじゃない。愛想を尽かされたら、それこそ生きていけない……。分かってる。分かってるんだよ?でも、会いたい。離れていると不安。龍さんのことになると、僕は少しもオトナになんてなれないよ。あ、こういうのが、ダメなのか。
こっちに来てから、僕は僕で忙しく過ごしている。講義はサボらずに受けているし、なるべく、たくさんの人と交流を持つようにしている。人見知りだからドキドキするけど……。
レポートもちゃんと提出しているし、息抜きに、真彩さんとショッピングに出かけることもある。休みの日は、パパのホテルで仕事の見学をさせてもらったり、簡単な仕事を任せてもらったり、龍さんに言われた通り、自分の目で耳で感覚で、学ぶ機会を多く持つようにしてる。
留学して良かったって、本当に思う。あのまま、ただ反抗したい一心で日本にいたら、僕は貴重な経験をせずに、オトナになってしまうところだった……。
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