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晴れ時々、曇りのち、晴れ
初めて龍さんに電話した時——僕は電話の相手に恋をするなんて、少しも思っていなかった。龍さんに会えない夜が、どんな夜よりも長くて長くて、胸を締めつけるものだなんて知らなかった。
机の上にノートと参考書を開いてみたり、ベッドに横になってみたり、歩夢に借りた漫画を読んでみたり、ホットミルクなんて作ってみたり——でも、結局、僕の思考は『龍さんに会いたい』ってトコロに戻ってきて、月が浮かんで、星が煌めく空を見上げながら、ため息なんてついてしまうんだ。恋は人をロマンティックにさせる魔法だよね。
スマホを手に取って時間を確認する。22時——そろそろかな。ベッドに腰掛けて、両手でスマホを持つ。視線は画面に固定。やだな、なんかドキドキしてきた。
「いつもの時間くらいに電話するね」
龍さんのその言葉を糧に、僕は今日一日を生きてきたんだ。ドキドキ。ドキドキ。まだ、龍さんの声を聞いたわけじゃないのに、心臓がやけにうるさい。龍さんが好きって気持ちが全身に広がって、僕の全部がドキドキしてる。
はぁ〜、と、ひとつ息を吐く。落ち着くんだ、自分っ。いつもの時間くらいってだけで、きっちり22時に電話するなんて言ってないんだから、もう少し、ゆったりとした気持ちで待とうじゃないか。うん、そうしよう。
握りしめていたスマホをベッドの上にそっと置いて、本棚の並びに置いてある1人掛けのソファに腰掛けて、膝を抱える。
「………………」
どんなに凝視してもスマホは鳴らない。
龍さん、何してるのかな……。はっ‼︎もしかして、また突然、楓さんが来て飲み会が始まっちゃったとか?
いやいや、もしかしたら、アスナさんが夜這いに来たのかも?あの人ならやりかねない……。僕がいない時を狙って、龍さんを襲うかもしれない。
ふと、下着姿で龍さんの上に跨っているアスナさんの映像が頭に浮かぶ。挑発するように熱を持った瞳で龍さんを見下ろしている。エロい‼︎エロすぎるっ‼︎ふぁっ、ふぁっ。両手を頭の前でぶんぶんと振り、アスナさんを消し去る。
「ダメだ……、疲れた……」
ベッドに腰掛けてスマホを持つ。そのままパタリと体を倒すと、眠たくなってきた。もう、待ちくたびれた。寝る。寝てやるっ。龍さんのバカバカバカバカバカ……バ、カ……。
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