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——pi pi pi pi pi……
ん?スマホ、鳴ってる?
握りしめていたスマホの画面を確認すると、なんと、龍さんからの着信ではなくアラームだった‼︎
「は?え?な、なんで?」
慌ててベッドから飛び起きてカーテンを開けると、月は姿を消し、太陽がビルの隙間から顔を出している。光が乱反射して、相変わらず眩しい‼︎
「朝だ。間違いなく、朝だ……」
へなへなと窓辺に座り込み、昨晩の失態を反芻する。確かに眠たかった。寝てやるって思った。でも、それって、本気じゃなかった。寝る前に龍さんの声が聞きたかった。……最悪だ……。
床に両手を付いて項垂れていると、ベッドの上でスマホが鳴った。のそのそと重たい体を引きずってベッドまで行くと、画面に龍さんの名前が浮かんでいた。
「龍さんっ‼︎」
音速で通話ボタンを押して耳に当てると
「あははっ。おはよう。もう、起きてたんだ」
という、龍さんの声が聞こえた。
「はいっ。起きてました。おはようございます」
「昨日、ごめんね。商店街でボヤ騒ぎがあって、バタバタしてたら電話するの遅くなっちゃった。出ないから怒ってるか、寝てるか、かなって思ってたんだ」
「不貞腐れてベッドに横になってたら、気づいたら寝てました。でも、朝から龍さんの声が聞けたのでもうご機嫌です」
「約束破ったんだから、もっと怒ってくれていいのに……」
「怒りたくても怒れないんです。龍さんのこと好きだから」
ふふっと笑うと、電話の向こうで、龍さんも、ふふっと笑った。
「ねぇ、会いたいんだけど」
「僕も会いたいです」
「今日は会える?」
「講義が終わったら走って行きます」
「分かった。待ってる」
「はい。待ってて下さい」
「良い子で待てたらキスしてくれる?」
「もちろんです。いっぱい、いっぱい、してあげます」
いつになく甘えん坊な龍さんに
「じゃあ、また後で」
と伝えて電話を切った。昨日の夜はあんなに不安だったのに、今は少しもそんなこと思わない。龍さんの声を聞いただけなのに、僕って本当ちょろいな。
窓に向かってぐーっと伸びをする。さっき見た景色と同じはずなのに、空はもっと青く見えるし、攻撃的だった太陽の光も、柔らかく感じる。
「よーしっ。準備しよ‼︎」
今日の天気は快晴。雲ひとつない青空です。
*付き合い始めくらいのお話ですね。
ラブラブ♡
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