お好み焼きパーティー

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   と、いうわけで、早速、お好み焼きパーティをすることにした僕たちは、カフェの営業が終わった後、買い出しに出かけた。  頃毛精肉店で豚肉を買って、八百屋さんでキャベツを買った。スーパーで、お好み焼きの粉とその他もろもろを買い揃えている間、僕はめちゃくちゃ幸せだった。カートを押しながら、次々と手際良く必要な物をカゴに入れて行く、それはそれはカッコ良過ぎる龍さんを、1番間近に見られたからっ。  龍さんが真剣にお買い物をしているのに、僕は、手を繋ぎたいな、とか、腕を組むくらいならいいかな、とか、でも人前でベタベタするのはあまりよろしくないよな、とか、そんなことばかりを考えていた。 「よしっ。必要なものは全部揃ったはず。帰ったらパーティーだぞ、司」 「はいっ‼︎早く帰りましょうっ‼︎」  スーパーを出た途端、駆け足になった僕を余裕の表情で追いかけながら、龍さんが笑っている。 「そんな腹減ってるの?」 「それもありますし、龍さんが作ってくれるお好み焼きを早く食べたいというのもありますし、まぁ、とにかく早く帰りたいんです」  早く帰って龍さんに甘えたいって言うのは、さすがに躊躇われる。 「つっかさきゅーんっ‼︎」  不意に、背後から聞こえた聞き馴染みのある声に振り向こうとした途端、肩の上にどすんと何かが乗っかった。僕には運動神経なんてものは無いし、筋トレもしてないので筋肉もない。ぐらりと体が前のめって、あ、転ぶ、と思った。 「あぶねえだろ、楓」  僕の体を片手で支えている龍さんが、反対の手で楓さんの額を激しく弾く。今、痛そうな音がしたけど大丈夫かな。 「いった‼︎痛いよ‼︎加減してよ、筋肉おばけ‼︎」 「誰が筋肉おばけだよ。そんなマッチョじゃねえっつーの」 「黙ってて筋肉つくんだから、筋肉おばけじゃんっ」  貧弱な僕のせいで喧嘩が始まってしまった。なんかごめんなさい……。額をさすりながら、龍さんに吠えている楓さんに向き直り 「楓さんっ。一緒にお好み焼きパーティーしませんか?」  と、言うと、楓さんはパァッと笑顔になった。 「する、する‼︎お好み焼きパーティー久し振りじゃない?」  そう言って見上げた楓さんに、龍さんは少し不貞腐れた様に 「あぁ、そうだな。いつ振りだっけ」  と、答えた。 「なんだよその顔。あからさまに、司きゅんと2人が良かったみたいな顔するのやめてくれる?」 「そんな顔してないけど?」 「してるじゃん。めちゃくちゃしてるじゃん。邪魔?ねぇ、俺、邪魔?」 「邪魔なんて言ってないけど?」 「その顔は言ってる様なもんだよ?龍さんっ‼︎」  終わらない……。終わらないよ、言い合いが……。 「あー、もうっ。2人とも早く帰りましょう。楽しみだなぁ、龍さんのお好み焼きっ」  右手で龍さんの手、左手で楓さんの手を掴んで駆け出そうとすると、楓さんは 「よーしっ‼︎tosacafeまで競争だぁ‼︎」  って言ってくれたのに、龍さんは走るのが面倒くさいのか、立ち止まったまま。 「龍さん、もしかして怒ってますか?」  そう問いかけると 「いや、怒ってないよ。買い忘れ思い出した」  と言って、スーパーに戻って行った。
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