キミの隣、ふわり

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 結局、僕は龍さんの 「一緒にお風呂入ろうよ」  と、いうお誘いを、断ることができなかった。 「本当、恥ずかしいので、あんまり見ないでください」  と、いう僕のお願いを、龍さんは軽く聞き流し、握りしめていたタオルは、呆気なく取り上げられてしまった。  今なら恥ずかしさで死ねる‼︎と、思っている僕とは相反するように、龍さんは常時、楽しそうに笑っていた。  お互いの髪や体を洗いあって、時々キスをした。触れたいけど、恥ずかしい。恥ずかしいけど、触れたい。僕の思考はぐるぐると回り、頭がクラクラする。 「まだ恥ずかしい?」  向かい合って湯船に浸かっている龍さんが、揶揄うように聞いてくる。いくらお湯が乳白色だって言ったって、お風呂場は明るいし、お湯から出たら丸見えだし……。 「恥ずかしくて死にそうです」  湯船の中で体を反転させ、龍さんに背を向けて膝を抱える。うん。これならあんまり恥ずかしくない。  龍さんの家のお風呂はベッドに続き、またまた大きい。大きいっていうか、湯船が丸くて、ホテルのお風呂みたい。カッコよくて素敵なんだけど、龍さんと一緒だと気が休まらないよ。  ふぅ、とひとつ息を吐くと、水の動く音と共に、後ろから抱きしめられた。  龍さんの唇が僕の首筋に触れ、ちゅっという音が響く。お風呂場って音が反響するんだ。そう気づいた時には、龍さんは、わざと音をたてながら首元にキスを降らせ、裸の背中に指を滑らせる。 「っ、ん……」  ぞくりとした快楽に、思わず声が出そうになって口を押さえる。 「あいつらどうせ酔っ払ってるから、声出しても大丈夫だよ」  耳元で囁いた龍さんの唇が耳を喰み、大きな手は僕の足の間へと移動する。 「っ、ダメ、です」 「なんで?」 「っ、恥ずかしい……」 「かーわいい」  顎を掴まれ、後ろを向かされたところで唇が重なる。湯船の水が動く音と、口内を愛撫される水音が、至るとこに反響して、頭が可笑しくなりそうだ。 「気持ちいい?」  龍さんの声が、指が、唇が、僕の全身に快楽を与え、声も、イクのも、我慢するのが限界だ。 「っん、も、やめ、て」 「やめなーい」 「イっ、ちゃう、から」 「良いよ。あ、手より口が良い?」  そんなことしたら、恥ずかしくて本当に死んじゃうよ。ぶんぶんと首を横に振ると 「じゃあ、このままイって」  と、囁いて、龍さんは手の動きを激しくした。 「あっ、やだ、まっ、て」 「待たなーい」  あぁ、もう限界だ、と思った時、僕はもう龍さんとは一緒にお風呂に入らない‼︎絶対に‼︎と、心に誓った。
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