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のぼせた。完全にのぼせた。
片付けてくるから、先に寝てていいよ、と言う龍さんのお言葉に甘えて、僕は龍さんのベッドに横になっている。暑い……、というか、熱い。身体中が火照って、いつまでも鼓動がおさまらない。
お風呂から上がってリビングに戻ると、楓さんもアスナさんも酔い潰れて寝ていた。テーブルの上には、からになった日本酒の瓶とビールの缶がいくつも転がっていた。どんなペースで飲んだんだろう、この人達は……。
それぞれにブランケットを掛けて、テーブルの上に水のペットボトルを置いておいた。明日は2人とも二日酔いだろうな。
龍さんの匂いがする布団を、抱きしめて目を閉じる。さっきの龍さん、めちゃくちゃエッチだった。元カノさんや元嫁さんとも、お風呂であんなことしたのかな……。
さっき、アスナさんが龍さんに抱きついていたせいで、アスナさんと龍さんが、お風呂でイチャイチャしてる映像が頭に浮かぶ。わぁーっ‼︎……眠れない‼︎
がばっと布団をめくって、体を起こす。龍さんのお手伝いをしよう。そう思った時、寝室のドアが開いた。
「まだ起きてたんだ」
「はい。なんか眠れなくて……。片付け、終わったんですか?」
「うん。大した量じゃなかったからね」
ベッドに乗った龍さんが、僕の上に跨るようにして体を寄せ、Tシャツの中に手を忍ばせてくる。
「司ってすべすべで気持ちいい」
「っ、や、くすぐったいです」
「くすぐったいの先に、気持ちいいがあるんだよ?」
龍さんはニヤリと笑うと唇を重ねた。自分が纏っているボディソープと同じ匂いがふわっと漂って、それだけで嬉しくなる。ちゅっという音がして唇が離れると
「さて、寝ようか」
と言って、龍さんはベッドに寝転がり、自分の腕に僕の頭をのせた。
「おやすみ、司」
おやすみ、じゃないよ。僕ばっかりいろんなところを触られて、こんなに体が火照っているのに、龍さんは涼しい顔をしている。……許せない。
龍さんのTシャツの中に手を忍ばせ、体の線をなぞ……る、つもりだった。でも、僕の手は龍さんの手に掴まれ、呆気なくベッドに縫いつけられた。
「なに、まだ触ってほしいの?」
龍さんは僕を見下ろして、優越感に浸っている。やっぱり、許せない。
「違います。僕も龍さんに触りたいんです」
「それは無理。俺、触られるより、触りたい派だから」
「そんなのズルいです」
「ズルくないでーす」
龍さんは勝ち誇った顔をして、またベッドに寝転んだ。
「マジで眠い。司のこと抱き枕にしよ」
僕の頭を腕に乗せ、反対の腕は僕の体を包みむように回される。完全に抱き枕だ。しばらくすると、規則正しい呼吸が聞こえてきた。本当に寝ちゃった。ズルいな、僕はドキドキして眠れないのに……。でも、今夜は朝まで一緒に眠れるんだ。嬉しいな。
「龍さん、大好きです」
龍さんの背中に腕を回し、僕も目を閉じた。
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