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「そういえばさ、今度、商店街のお祭りがあるんだけど、司も来ない?」
「お祭りですか?来たいです‼︎来ます‼︎」
龍さんとお祭り‼︎絶対に楽しい‼︎断る理由なんてどこにもないよ。はしゃいだ声を上げた僕の肩を抱き寄せ、龍さんが耳元に唇を寄せる。
「ねえ、浴衣着てよ」
「え?浴衣」
「そう。時期的にはまだ早いけど、一応、夏祭りの扱いだから、露天が出たり、花火が上がったりするんだ。司は、浴衣が似合うと思うんだよね。まぁ、祭りの後に脱がせることしか考えてないけど」
龍さんはクスクスと笑っている。相変わらず朝からエロいことしか考えてないみたいで笑っちゃう。
「だったら、龍さんも着てください」
「えー?俺は似合わないんだよ、背が高すぎて」
「そんなことないですよ。見たいなぁ、龍さんの浴衣姿」
「俺は着ませーん」
「つまんない……」
不貞腐れて見せると
「かーわいい」
と、言って額にキスをされた。うまく誤魔化されたのは否めないけど、嬉しいから仕方がない。
「お祭りっていつなんですか?」
「土曜日と日曜日。バス停のとこの公園でやるんだ。基本的に、商店街の人たちが楽しむ祭りだから、時間はテキトーかな。一緒に花火見よう」
「はい。絶対に見ます。楽しみだなぁ、花火」
「楽しみだなぁ、浴衣を脱がせるの」
そう言って、僕のTシャツの首元を少し下げて、自分でつけた赤い印を確認している龍さんは本当にエッチだ。朝だって分かってる?
「まだ言ってる」
と、呆れた顔をすると、龍さんは、おどけたように肩をすくめた。本当に、可愛いなぁ。離れたくなくなっちゃうよ。
もっとずっと一緒にいたいけど、大学に行って学ぶことも、僕には必要な時間だ。
「いってらっしゃい」
「いってきます。龍さんは、お仕事頑張ってくださいね」
「おう。気をつけて」
そんな言葉を交わして、バスに乗る。窓から龍さんに手を振ると、恥ずかしそうに手を振り返してくれた。
龍さんが見えなくなるまで窓の外を見ていた。大好きな人に見送られるのって、こんなに幸せなことなんだって、初めて知った。離れているのに、そばにいる時と同じくらいドキドキする。僕って幸せ者だな……。
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