キミの隣、ふわり

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   金曜日の夜。  明日は大学が休みだから、朝から龍さんのところに行けるんだ、と思うと、自然と笑みが溢れてしまう。恋人とお祭りに行くなんて初めてだから、ドキドキが止まらない。  龍さんには、浴衣が似合いそうだと言われたけれど、クローゼットを開けて確認するまでもなく、僕は浴衣を持ってはいない。そもそも、女の子ならまだしも、男の子が浴衣を持っているって、あまり聞かないような……。  浴衣を着れないとすると、明日は何を着よう。とりあえずクローゼットを開けて服を確認。お祭りっぽい服って……何?いつも通りで大丈夫かな……。  そうだ‼︎ファッションとくらに行ってみて、浴衣が売っていたら買おうかな。史乃さんは優しいから、お願いしたら着させてくれるかもしれない。そうだ、そうしよう‼︎あぁ、楽しみだな。  浮き足立った僕がベッドに飛び込んで、今まさに、龍さんに電話をしようとした時、部屋のドアがノックされた。 「司、ちょっといい?」  ママの声に、慌ててスマホを枕の下に隠す。別に隠す必要はないんだけど、なんとなく……。  ベッドに座り直してから 「どうぞ」  と、答える。  どうしよう。嫌な予感しかしない。 「あら、明日の準備をしていたの?」  部屋に入って来たママは、クローゼットの扉が開いているのを見て、そう言った。明日のお祭りのことは、まだママには伝えてない。準備ってなんのことだろう。首を傾げると、ママは背中に隠していたスーツを僕に見せて 「どう?素敵でしょ?司に似合うと思って買っちゃった」  と、言って差し出した。  新品のスーツとワイシャツとネクタイ。パパ御用達のお店で仕立ててもらった高級品なのだろう。僕が持っている数着のスーツとは、少し感じが違う気がする。 「何?そのスーツ……」 「何って、明日のパーティーで着るスーツよ?急いで仕立ててもらったの。間に合って良かった。明日は、パパのお友達もたくさんいらっしゃるから、ご挨拶もしなければいけないし、それに、皆さん留学経験者だから、貴重なお話が聞けるはずよ?楽しみね」 「僕、パーティーがあるなんて聞いてないよ?明日は、」 「他の予定はキャンセルしてね。全て」  ママは菩薩のように微笑んで、僕にスーツを押し付けるように渡すと部屋を出て行った。
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